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まひる@正午の月
まひる@正午の月
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LOVER'S GAME ~最悪の出会い~

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とある山の中にそびえ立つ大きな学校。
ここは金持ちのご子息様だけが通うことを許された由緒正しい男子校。
ここの卒業生は明るい将来を約束されたようなものだ。
初等部から大学部までエスカレーター式で中等部から強制的に寮生活を強いられるため、
外界から完全に切り離される。
女生徒の交流はほぼないため、健全な男子高生たちの恋愛対象は専ら同性に向くのだ。
 
 
 ぱっちりした二重の目、漆黒の潤んだ瞳と艶やかな髪、白くてきめ細かい肌と華奢な体
つき、そして目元の泣きぼくろがエロスを引き立たせる人目を惹中性的な美しい美少年。
彼がこの物語の主人公、火山翠(ひやますい)この学校に通う高校2年である。
彼は男女ともに好かれる美しい顔立ちのせいで危険な目にしばしば遭っていた。
そのため、彼は外に出るとき顔を隠すようになった。
前髪を伸ばし、黒縁の眼鏡をかけてしまえば、
彼は一瞬で根暗と呼ばれる雰囲気に一変してしまう。
しかも、アメリカ育ちであまり日本語もあまりうまくない彼にとって
この出で立ちは逆に話し掛けられる心配がなく都合よかったのだ。
友達は確かに少ないが、話せる人間がいないわけじゃない。
自分を知る最低限の人間だけいればいい、
彼はこの学校へきて約一年足らずでそんな結論に達したのだ。


 ある日、あまり連絡の来ない母親から久々に連絡がきた。
何かと思い内容を見ると迎えに行くから正午玄関で待てとの指示があった。
アメリカから帰国後まだ数度しかあっていない母からの連絡に嬉しくなり、
準備を整える。
前髪を分け、眼鏡をはずし、鏡を見ると
自分の美しいと称される顔があらわになっている。
自分が心底嫌いな顔を睨みつけ、母の言いつけ通り玄関で待つ。
すると自分の目の前にベンツが停まり、中からきっちりとしたスーツを着た20代後半く
らいの体格のいい男が運転席から降りてきた。
彼こそが翠の専属ボディーガード兼運転手の東(あずま)だ。
東は翠に向かってにこりとほほえみながら挨拶すると、彼を後部座席へと促した。
翠は少し微笑み返してから後部座席へと乗り込んだ。


 山の上の学校から約二時間。
都心の超高層ホテルの最上階に位置するレストラン。
提示された場所に行くとそこには母の姿はなく、
父の側近である第一秘書の北山と見知らぬ夫婦、そして長身の男前がいた。
翠にはその男前に見覚えがあった。
なんせ、あの腐った学校で一番のイケメンとして一般生徒を
とっかえひっかえ遊んでいると噂の生徒会長だ。
あの金持ち学校の中でも群を抜いて金持ちの言わば御曹司で
文武両道な天から恵まれまくった男である。
「Who are they?(誰?)」
翠は内心驚きを隠せなかったが、得意のポーカーフェイスで北山に問う。
「You can't speak English.(英語は喋らないで下さい。)
今日は日本語でお願いします。
こちらは八雲グループの八雲会長とそのご婦人、
そしてご令息の青海(おうみ)様です。」
丁寧に説明する第一秘書になぜこの場に自分が呼ばれたのか疑問を感じつつも一応頷く。
「火山翠と申します。お待たせして申し訳ありません。」
日本語は苦手だが、なんとか形式的な挨拶を済ませると八雲会長はにこりと席に促した。
席にかけると「翠ちゃん、久しぶりね。」とご婦人が声をかけてきた。
正直まったく身に覚えがなくきょとんとしていると
「アメリカの孤児院でボランティアに参加していたのだけど、覚えていないかしら?」
とほほ笑んだ。
アメリカの孤児院、それは翠がよく父さんについて行ったところだ。
同い年くらいの親のない子たちが集まり、家族のように生活していた。
翠はその子たちとよく遊んでいたのだ。
確かにあそこにはよくボランティアが来ていた。
お菓子を持ってTシャツGパンの女性がニコニコしながらよく来ていたのだ。
「Madam Mary? Long time,no see!(マダム・マリー?お久しぶりです!)」
思わぬ知人との再会に英語で語り掛けてしまった翠に北山は咳払い一つで咎めた。
翠は少し気を落ち着かせ、続ける。
「今日はあまりに美しく、気が付きませんでした。」
マダム・マリーとはそこでの愛称だった。
確かに孤児院での姿も美しかったが、着飾った今はもっと美しい。
別人のようでまったく気づかなかった。
「茉莉(まり)、そろそろ本題に入ろうか。
翠君も青海もなぜ呼ばれたのか気になっていることだろう。」
八雲会長の一言で話は変わる。


「時に翠君、君にはお付き合いしている子は今いるのかな?」
いきなりの質問に目を丸くする。
「残念ながらおりません。」
何の意図があるのかわからないがとりあえず本当のことをこたえる。
「それはよかった。それでは翠君、青海はどうかね。」
何が良かったというのか、そしてなぜ今生徒会長を進められているのか、
全く理解できない翠は首をかしげる。
「あら、あなた。そんな聞き方じゃ伝わらないわ。ねぇ、翠君。うちにお嫁に来ない?」
茉莉が言い直す。
それでもよく理解できない。
「あの・・・。僕が、嫁に行くんですか?貰うのではなく?」
男の自分に言われないようなことを言われ思わず聞き返す。
「翠ちゃんが、お嫁さん。青海が旦那さん。
事実婚になるから、実際は養子になるのかしらね。」
どうやら耳にも理解力にも異常はない様だ。
本当にそういう意味らしい。
「北山さん、母と父はなんと?」
横にいる北山に問う。
「このご縁談を頂いたときに即決なさったのは碧(みどり)様です。」
碧は翠の母の名前である。
つまり、母は翠を早くこの家から追い出したかったのだろう。
「I see...(そう...。) 一つ、こちらからお聞きしてもよろしいですか。」
翠は混乱をとりあえず脳の片隅に追いやった。
「なぜ、僕が青海さんのお相手に選ばれたのでしょう?」
今日一番の疑問を翠は素直にぶつけた。
「青海が男女見境なく手を出してるのは同じ学校だから耳に挟んだことがあるだろう。」
翠はうなずく。
「しかし、将来グループを担う上でそんなことが許されるはずがない。
そのようなスキャンダルは企業イメージにも繋がる。
だからこそ、私は男女関係なく青海が夢中になれる子が婚約者になるのがいいと思った。
そこで、翠君がいいのではと茉莉が言い出してね。
そこで決まったのさ。」
茉莉から言い出したという事実に少なからずアメリカでの生活が関係しているようで、
翠は複雑な気分だった。
「collar...(首輪か...)」
つまりはスキャンダルを防ぐために首輪になれと言っているのだと翠は思った。
「すみません、ちょっと失礼します。」
一旦整理するために翠は一時その場を離れた。


 トイレでとりあえず状況を整理する。
母はためらわずに結婚を快諾した。
自分が邪魔だったのだろう。
そして、八雲夫妻は自分を首輪だけの価値として結婚を申し込んだ。
それでは自分の意思はどこにあるのか。
それについてもう一人の当事者はどう思っているのだろうか。
翠には疑問が芽生えた。
「I must go buck...(戻らなきゃ...。)」
翠は半ば諦めたようにレストランの個室に戻ろうとした。