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みやこたまち
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novelistID. 50004
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そののちのこと(口頭試問)

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 「発掘されたのだそうだ。彼女は」
 男がゆっくりと言った。そして、懐からタバコを取り出して火をつける。ゆっくりと吸い込んで、天井へ向けて吐き出す。煙は空間を漂い、そのまま二人の間にとどまる。もう一人の男が影になった男の顔を怪訝そうに見つめていたが、煙に紛れて見えなくなった。光と、煙の向こうから、声だけが響いてくる。
 「彼女の失踪は、誰にも影響を与えなかった。表面的にはね。両親は共に死んでいたし。まさに、彼女の語った通りの学生生活だった。彼女一人のことならば、私もこうまで係わり合いにならなかっただろう。だが、私は今、君と対座している。再び、というべきだろうか。君は何一つ変わっていない。そして、私は以前よりも確かな意識をもっている。いや、持たされていると言ったほうが良いだろうね。それは、君の仕業だった」
 女は首が痛くなるほど天を仰いだ。夏の太陽は昇らなかった。透明な空はあくまで高かった。女は深みにいることに恐怖を感じていた。耳鳴りが止むと、一切の音が消えた。そして、女は自分が冷たいドームの底に縛り付けられていることに気付いた。低く、そしてゆっくりとした男の声が、耳や口や鼻腔から入り込んでくる。恐怖と平安とが同時に襲い、緊張と弛緩とが彼女の体を分解していた。女は、壊れるということの意味を始めて悟った。けたたましい笑いが自分の口から発生していることに気付いた。その後に、再び冷たい闇が訪れた。
 男は肩を落として立ち上がり、テラス扉を開け放した。満天に星が満ちていた。かまどうまの声が森の中から聞こえた。これが静寂だ、と男は思った。

休息

おしまい