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熾(おき)
熾(おき)
novelistID. 55931
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月のあなた 下(4/4)

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 ところが自分はそんなことかけらも覚えていない。ほとんどすっぽりと言って良いほど、記憶が抜け落ちていた。そのためか何度も分析され、カウンセリングされ、昨日まで家に戻れなかった。

(それどころか…) 

 日向のあの腕輪を見た瞬間、とてもではないが人には言えない光景が、目の前によみがえったのだ。
 それは、和家上空の、月と日との中心にいた二人の少女の記憶だった。

(わたし、やばい…?)

 そう思うと胸の中心辺りに、なにか違和感が――

「っと…もう着いちゃった」

〈学園長室〉とそのドアには看板が張られていた。