月のあなた 下(3/4)
日向は何度も喉を鳴らして、涙を流した。
――「○」か「×」か! 「○か×」かです! ――
無意識なのだろうか。
祇居の掌が背中に回されていた。
自分は助かった、というように感じた。
日向は、えさをもらった猫のように気だるげに喉を鳴らした。
吸血という血なまぐさい行為をしている。
男の人の喉を食い破るという忌まわしいことをしている。
なのにわたしは安心して、まるで授乳をされているようだった。
それは今まで味わったことのない。
唇から始まるたしかな血の繋がりだった。
作品名:月のあなた 下(3/4) 作家名:熾(おき)