そののちのこと(鬼)
無理をして体を折り曲げ、足元の男を愛撫した。男が、捩じれた首を女の方へ向けたような気がした。自分がこうして抑えていれば、男はもうどこへも行かない、と女は思った。狭くて暗い、地獄のような所で、女は男を愛撫した。指先から血が滴った。女はその血が自分の体から流れて出ているのだということに気づいた。見上げると、遠くに見知った男の顔が覗いていたような気がした。それも刹那の事だっ
たので、女は、きっと幻を見たのだろうと思った。低い音で風が鳴り、その音に送られるように、女の意識は薄らいでいった。(完)
作品名:そののちのこと(鬼) 作家名:みやこたまち