小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

Hysteric Papillion 第7話

INDEX|2ページ/2ページ|

前のページ
 

「だからっ!いいかげんにしてくださ…っ…い…」

薫さんはまたふざけているんだとばかりに、体を引き剥がそうとしたのに、どうしてかなかなか離れてくれないし、引き剥がそうとしても、明らかに無理だった。









薫さんの心音がすぐそこに聞こえて、私の鼓動もそれに重なっていたのが聞こえた。     









ドキドキ…する。









そして、トクントクンと、小さく大きく聞こえる鼓動が、心地よいリズムに変わっていく。









…本当に変かな、私…。    










「…ごめんね」    

予想外に、薫さんの口から小さく紡ぎだされたのは、そんなことばだった。    

本日2回目の『ごめんね』、しかも躊躇い気味の。    

あの焼き肉屋での『ごめんね』と、一緒に、重なって聞こえてくる。    

今にも、泣きそうな声だったから、何も謝る理由を訊けない。










訊けない…。










訊けるはず、ないじゃない…。    










薫さんの腕にきつく力が入る。    

だから、おそるおそる…いや、自分から望んで薫さんの背中に両腕を回した。   










サヨナラしたくないよ…。










もう少しでいいから、一緒に…。











「お嬢様」    












私は、その声に気付いて、すっと薫さんの背中に回していた両腕をはずし、まるで回れ右をするみたいに大きく振り返った。    

そこには、背の高い男が4、5人、黒ずくめのコート姿にサングラスの、いかにもSPのような雰囲気で立っていた。

男の一人が、私を薫さんから引き離すように腕を取り上げた。   

「社長がお怒りです。お早くお帰りを…」    

「…わかりました」

抑揚も少ないこの言葉に、私は、重苦しい雰囲気の霧を飲み込んだような気分だった。

作品名:Hysteric Papillion 第7話 作家名:奥谷紗耶