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Hysteric Papillion 第4話

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同じものが、ズボンの右足の付け根辺りにもある。

書かれている字は、Papillion。

英語じゃないと思うけど、意味は絵からいうと、蝶という意味なのかな?

それに、蝶って、私にいろいろと思い出させちゃうんだよね。   

「…どうして、この服なんですか?」  

「まあまあ、着てみたらわかるよ」   

にこーっとした意味深な笑顔を見せられた後、またあのカーテンレールの部屋に入れられて、今度もまたパパーッと服を脱がされて、新しい服を着せられた。

ただし、今度は脱がせた後に触る…なんていう恐ろしいオプションは、さすがについていなかったけど…。   

じーぱんに足を入れて、シャツに袖を通した後、しっかりとベルトを締める。

初めてはいたので少しきゅっと締まるような感じもしたけど、悪くはない。

ベルトも、少し横から垂らした方がカッコイイと薫さんがいじくった。   

だけど…問題は、黒いTシャツのほうだった。  

「よしよし、完璧!」

「ど…どこが完璧ッ…なんですか…ぁ…」   

このシャツ、長さは中途半端に短くて、胸のほんの少し下までわずか生地がある程度だし、脇腹の方は、ブラを見えなくするために1、2箇所だけひもで結んであるだけで、スウスウするし…。

と…とにかくっ!露出しすぎだって!!
  
私は、あたふたしながらもシャツを脱ぎ始めた。

しかし、それを薫さんが許すはずがない。  

「あ…こら、ダメだって」  

「そんなこと言われても…こんな服装じゃ外、歩けないっ…?」   

そう言う私の唇に、そっと薫さんは指を置いた。  

「大丈夫だって、すごく可愛いから。私が保証してあげるって」  

「っ…あなたに保証されたって…」   

皮肉いっぱいにそう言った瞬間、私の顔の両隣に、いきなりバンッと薫さんの腕がつきたてられた。

ぐんと顔が近づいてくる。









また…されるのかな?









そう思ってギュッと目を閉じて覚悟したとき、薫さんの真っ赤な唇が触れそうなところでぴたっと止まり、小さく動いた。  

「今の君に足りないのは、『自信』かな?」  

「…自信?」  

「今まで見たことも感じたこともない世界に入ってきて、自信をなくしてる…っていうところ」   

さっきから思ってたけど、こういうときの、真剣なときの薫さんの顔は、女の私だってドキッとするほど色っぽい。

少しずつ顔が赤らんでいっている気がする…それを紛らわさないと、とにかく…。  

「…どうして今まで見たこともないってわかるんですか?」   

ぎこちない口調でそう突っ込んでたずねると、またいつものような笑みを浮かべて、ちょんとおでこに指を当てた。
 
「そりゃあ、聖マリアンナの制服着てたら、わかるよ」   

薫さんは、そう言ってワハハハと笑った。

そういう…ものなのだろうか?   

和美様と知り合ってから、だいぶ外の世界をわかるようになったと思っていたのに、そんな経験不足なところを薫さんは鋭く痛く突いてくる。

でも、本当に何でもわかるんだなぁ、薫さんって。

本当…このままで、セクハラするところさえなけりゃ、尊敬したいところなんだけど…。

そんな感じでごちゃごちゃと頭の中をかき回していると、薫さんはチョキンと、カウンターから借りてきたのか、ハサミで服とズボンについている値札の紐を切る。

それで、また腕を引っ張って、せかすようにカーテンの中から私を引きずり出した。

カウンターにハサミを差し出す手を休めずカバンの中に入れて、財布を取り出すと、手元には2、3枚、一万円の姿がチラッと見えた。

ベルトと洋服とズボン、それからおまけのパンプスの合わせて2万2千円。

薫さんはカウンターの人に、意外と安いな、とかもらしているけど、こっちとしては迷惑極まりないといえば、極まりない。

今日会ったばかりの人に洋服まで買ってもらっていては、失礼でもある。

でも、こう言っていても心の隅で思うのは、この洋服と食事の見返りとして、自分が要求されないかな…というぞくっとする恐怖だったんだけど…。

恭しく店員さん2人に頭を下げられて、店を出た。

何だか、あの2人の薫さんへの視線がちょっと妙だったのも気になるけど、手を出したりしてたんだろうか?

まあ、何がどうであれ、私には関係ないからいいけど…。

さて、もう時間も8時前だし、そろそろ私が行きたいといった店に連れて行ってくれるものだと思っていたのに、どうも、薫さんは先ほどからチラチラとこちらを見てきてならない。

隣で、さっきと同じように腕を無理やり絡められて、カップルみたいになって歩いてあげているのに、一体何が不満なの?

それを聞こうとした時、先に薫さんが、こともあろうか、私の髪の毛を捕まえてまじまじと見つめてきた。  

「うあっ!」  

「あーあー、そんな男の子みたいな声上げないでよ。せっかくのかわいい声が台無し」  

「そういう問題じゃ…」  

「あ、もしかしてもう食べに行けると思った?」  

「はあ…」   

すると、ガバッと薫さんはいきなり私の後ろから抱き付いてきて、私を今日の朝のような抱き人形状態にしてしまった。

いや、それよりも首を腕で絞めるようにしたり、体を片手で強引に抱きすくめられているだけ、激しさが増している気がする。  

「うぐっ!」  

「『うぐっ!』じゃな~いの。今度はもっと可愛く声出すこと!わかった??」   

…ンなこと勝手に決められてたまるか!!   

私は、付き合いたくもないのに無理やり付き合ってあげているってのに…。  

変態ヤローの方がタチがいいかもしれない。   

こっちの気も知らずに、薫さんは自己満足の笑みいっぱいに私を締め上げて…く…るぅ…。  

「ちょっ…くる、苦しいって…」  

「そんな目をした反抗的な子にはお仕置き~っ」   

…何だか、だんだんこの人の言葉、退化してきてない?

つーか、ここ、人のいっぱいいる所だってのに、何考えてるの?   

じろじろとまわりから朝の私が浴びるような視線を感じる。

いい加減離せよ、こらっ!!  

「…これだけ注目されてるんだから、とことん極めないでどうするの?」   

肘上げを喰らわそうとしたとき、そんな声が耳元で聞こえた。   

注目って…それは、今こうして薫さんがこんなことしてるから、変な人たち扱いする視線が集中している…。   









…ことはなかったらしい。   









私は今の今までまったく気付いていなかったことだったけど、私たち2人が過ぎてゆくごとに、5人に4人の割合で男の人が振り返ってくれていたらしいんだと。

…まさか。

「…ね?極めてみる気になった?もちろん、ぜーんぶ私に任しておいてくれたらいいんだけどね?いーいところに連れて行ってあげるから」   

だんだん言語力まで崩れてきたのかな、この人…?  

「イヤだって言っても、連れ出すでしょう?」  

「あ、よくわかってるーっ!!やっぱりかわいいっ!」   
作品名:Hysteric Papillion 第4話 作家名:奥谷紗耶