何も考えず飛び込んだ青春
生きている
だから今いる場所とまた別の場所に行きたい
そんな思いで東京生まれの僕は函館ラ・サール高等部の寮に入った
悪い所じゃなかった
だって変人がいっぱいいるんだもの
ヘミングウェイやシェークスピアを原文で読むもの
インドの微分積分を解くもの
人工知能の仕組みをPCで理解するもの
トライアスロンをするもの
ダンスをプロ並みにするもの
そんな奴らと集まって3D映画を作った
残念だけど商品価値はない
世の中に出せるものじゃないけど、そんな事が問題じゃない
夜中こっそり女の裸のDVDをみんなで見て
下品に笑いながら興奮した
馬鹿をやった
酒もめいいっぱい飲んだ
僕達は確かに興奮したんだ
そして僕はこの函館の街のカフェで夢中になってアンネの日記を読んで、
人間の暗さを知りショックを受けた
そんなものを友と共有し合ったんだ
やりたい事があったら衝動を抑えきれずやったんだ
それが遠い街北海道の函館の高校で覚えたこと
何れ僕にとっての記憶の宝物
僕は今確かに生きている
細胞が――
魂が――
確かに――
(了)
作品名:何も考えず飛び込んだ青春 作家名:松橋健一