その武器、使わないんですか?
その武器でならなにをしても許される。
「それで、僕の武器は?」
何度聞いても答えはいつも同じ。
すでに支給済み、だ。
「でも、僕はみんなみたいに剣や銃を支給されていません!」
すでに支給済みです。
もうすでに使っています。
「くそっ! もういいよ!」
なんで僕だけ丸腰なんだ。
パパパパッ。
ズバァツ。
ドゴーン。
街は今日も支給された武器が使われていた。
丸腰の僕にできることは、怒らせないことだけだ。
「その武器、いいですね。
なんかアニメとかで使われていそう」
相手を怒らせてしまえば武器で殺される。
だったら、さっさと友達になってしまえばいい。
殺しのハードルが下がったぶん、
親しい人にはきっと武器を向けないだろうし。
「よし、これでひと安心だ」
と、思った矢先。
僕が話しかけた人は死んでしまった。自殺だった。
理由はわからない。
でも、おそらくこのイカれた世界のせいに違いない。
「やっぱりこんな世界は間違っている!」
耐えきれなくなった僕はお偉方に直談判した。
「どうしてこんな危険な世界を作ったんですか!」
答えは"みんな武器を持てば逆に振るわなくなるだろう"というもの。
お互いにけん制し合っての抑止力がなんとかかんとか。
でも、殺されることにおびえて生活するこの世界は間違っている。
「このままじゃ殺し合い続けるだけですよ!」
僕の言葉もあってか、最強の武器が等しく支給されることに。
単に最強といっても圧倒的じゃなければダメだ。
あまりに強すぎて使うのすらためらわれるほどに。
「そうだなぁ、誰にでも使えて、
誰にでも深い傷を残せるような武器が強いだろうな」
いや、まだ足りない。
「さらに、広範囲に攻撃することもできて
逆に限られた範囲に攻撃できるようなのが強いな」
もっともっと凶悪に。
「傷つけるだけじゃなく操ったりできれば最強だ!」
そんな武器をみんなに支給すれば、
きっと怖くなって誰にも使われないだろう。
お偉方は僕の提案を受け入れ
世界からその武器条件を満たす人間を探し、武器を回収することに。
これできっと平和になれるはずだ。
後日、お偉方が僕のもとにやってきた。
「検討の結果、最強の武器条件に当てはまったのは
あなたの武器『言葉』でした」
武器を回収された僕はもうなにも言い返せなかった。
作品名:その武器、使わないんですか? 作家名:かなりえずき