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てっしゅう
てっしゅう
novelistID. 29231
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「もう一つの戦争」 舞い降りた天使 6.

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扉を開けると五十六は背中を向けて洗い場に腰かけていた。ドキドキしながら近づく。
渡されたタオルに石鹸をつけて泡をたて、ゆっくりと背中をこすり始めた。

「すまないな。お嬢さんにこんなことさせて」

「いえ、そのようなことは・・・この力の入れ方でよろしいですか?」

「ああ、ちょうどよいぞ」

裕美子は五十六の左指の一部が欠損していることに気付いた。そういえば最初会った時にずっと左手はポケットに入れていた。それは宿でもそうだった。
人に見せたくないと言う気遣いなんだろうと思えた。

「裕美子さん、おれは日露戦争の時に初めて従軍して、敵の砲弾で被ばくして左の人差指と中指の先を飛ばしてしまった。化膿してひどくなって手首から切り落とさなければならないかもしれないと医師に言われたが、何とか指先だけの欠損で済んだ。これも神のご加護だ。命があっただけでも感謝しないとな」