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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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スケープゴートさえあればいい

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「おい田中!! 資料用意しろと言っただろ!」

やばい課長だ。
俺は慌ててスケープゴートに切り替える。

体はスケープゴートモードになって、
俺の本体はそれを近くでながめる魂になる。

「ガミガミガミガミガミッ!!!」
 ガミガミガミッ! ガミガミガミッ!」

どんなに怒鳴られていても、
体に入っているのはスケープゴート。

魂の俺までには声が届かないし、影響もされない。
楽なもんだ。

「はい……はい……」
「ガミガミガミッ!!」
「はい……はい……」

お説教が終わるとスケープゴートと体を入れ替える。
席に戻ったら同僚が半笑いで話しかけてきた。

「お前、またスケープゴート使ってただろ」

「バレた?」
「心ない感じだからな。使い過ぎだぞ」

めんどくせぇ。
ここでも説教か。

ようし。

「あんまりスケープゴートを使いすぎると
 どっちが本体なのかわからなく……」

「はい……はい……」

「あーー! お前! 今スケープゴートになったな!」
「はい……はい……」

困ったときはスケープゴート。
これ鉄板。


映画館で

「(チッ……隣の客がうるせぇな)」

なんてときも
スケープゴートに切り替えれば、
魂状態で静かに観賞することができる!


「暑っ……!」

というときでも、スケープゴートにしておけば
外を歩く時だけ魂になって暑さを感じない。

なんて快適なんだ。


「みんなもっとスケープゴート使えばいいのに!」

俺のようにバンバン使えばその快適さに……



キキーーッ! ……ドカッ!!


目の前で自分の体が吹っ飛んだ。
中に入っていたのはスケープゴートなので痛みはないが……。

「大変だ! 早く救急車を!」
「血が出ているぞ! タンカ!」
「はい……はい……」

ちょっ……待っ……!

あれよあれよという間に俺の体は担ぎ込まれた。
まだ魂は事故現場にあるままなのに。



ひじょーーにまずい。

俺は自分の体がどこに運ばれたかわからない。
このまま体と魂が離れたままだとどうなるんだ。

地縛霊とかそんなことになるのか……?


「なりますね」

「誰!?」

「どうも死神です。野ざらしの魂があると連絡があったので」

「ま、待ってくれ! 必ず戻るから!」
「待てるのは1ヶ月だけですよ」

それから俺は自分の体を必死に探した。
でも、近くに運ばれた病院には見つからない。

いったいどこに……。


"あの! 俺の体知りませんか!?"

「でさー、それで上司ブチ切れて」
「マジかよー」

だめだ。
魂の状態じゃ生身の人間に声が届かない。

死神の期限まで残り30分。



「……田中?」

顔を上げると魂状態の同僚がいた。
同僚も一時的にスケープゴートに体をまかせていた。

お互い魂なので言葉がかわせる。よかった。

「お前、スケープゴートになってたの? 気付かなかった」

「ああ、ああよかった。お前、俺の体知らないか?」

「知ってるよ。つーか、会社に来ているよ」
「会社!?」

病院ばかりさがしていた。
慌てて会社に行くと、俺の体が仕事をしていた。

「見つけたぁぁぁ!!」

自分の体に戻ると、やっと安心。
これで死神に回収されることもなくなった。


「これでひと安心だ。もう体を手放さないぞ」

"それはダメだ"


どこからか声が聞こえたかと思った瞬間
俺の体はスケープゴートに乗っ取られた。


"な、なんだ!? なにが起きたんだ!?"

「悪いが、今度からはあんたがスケープゴートだ」

"お前まさか……自我が……!?"


勝手に仕事が進められていたのも。
同僚がスケープゴートだと気付けなかったのも。

スケープゴートそのものが意思を……。


「ちわっす、約束通り魂回収しにきたっす」

死神に回収依頼したのも……


ザシュッ。