1日6時間しかない世界で
コールドスリープ装置の開発がついに終わった。
終わると同時に今日が打ち切られた。
>ご生活ありがとうございました!
>あなたの明日にご期待ください!
翌日も、俺に与えられた時間は1日6時間。
寝て起きてほぼ1日が終わってしまう。
テレビも見れなきゃ外にも出られない。
せっかく作ったコールドスリープ装置も
これではいつまでたっても売ることができない。
「……寄付、か」
俺は自分の日常時間延長をすることに決めた。
外に出ると、ちょうど暇そうに座り込んでいる集団が。
「あなたの日常を寄付してもらえますか?
あなたが寄付すればこの活動はすぐに終わ……」
「ダメだダメだ!」
建物の前に座ってるだけのくせに!
そんな嫌がらせするくらいの日常はあるのに!
……と言いたい。
「そうですか……」
結局寄付をしてもらえないまま2時間経過。
>ご生活ありがとうございました!
>あなたの明日にご期待ください!
そして今日が容赦なく終了。
「やっぱり顔が原因なのか?」
イケメンに整形して再度寄付を頼みに行く。
「いや、顔だけじゃダメだ」
さらにお金もあげちゃおう。
これなら日常を寄付したくなるはずだ。
「そうだ! なんなら日常を返却すると約束しよう!」
返却はウソだけど。
あとで返却されると思えば、安心して寄付してくれるはず。
「ダメだ」
結果はまさかの失敗。
「え、明日になれば必ず日常時間を返却しますよ!?」
「ダメだ」
「どうして!?」
「今だからできることをしてるんだ」
「暇だから座り込んでいるだけじゃ
>ご生活ありがとうございました!
>あなたの明日にご期待ください!
俺の今日が終了した。
「……はぁ」
日常生活を取り戻すために寄付をしているのに、
結果的に日常をただ消費しているだけだ。
ふと、目の前にコールドスリープ装置を発見。
「そうだ。未来なら時間短縮がされているに違いない!
きっと現代よりも寄付されやすいはずだ!」
未来の方が現代よりもさらに便利になって、
いろいろ時間短縮が発展しているにきまってる。
俺はコールドスリープ装置に入って5年眠った。
・
・
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「ここが未来かぁ。なんだかぼろぼろだなぁ」
未来ならもっと発展していると思いきや、
建物のいたるところがぼろぼろになっていた。
さっそく通行人に声をかける。
「すみません、日常を寄付してもらえますか?」
「ああ! もちろんだ! 持て余していたんだ!」
食い気味で俺に日常を寄付してくれる。
「ワシの日常受け取っとくれぇ!」
「早く明日になってくれ!」
「もうこんな日常こりごりだ!」
「すげぇぇぇ! やったぁ!!」
またたく間に人が集まって日常を寄付してくれる。
きっと未来は時間短縮技術がありすぎて、
1日6時間は使い切れないほどの長さなんだ。
「いやぁ、大量大量」
寄付されまくった日常のおかげで
俺は1日100時間生活が1年もできるようになった。
ゲームして、本読んで、寝てもまだ使い切れない。
なんだってできるんだ。
「よーーし! 手始めになにしようかなっ!!」
「貴様、こんなところでなにやっている」
「えっ?」
軍服を着た人に連行された。
「さぁ、早く前線に戻るんだ」
「えっえっ?」
銃を渡され向かった先は戦場。
「いいか、今日から1年は戦争だからな!
お国のために戦え! 逃げることは許さんぞ!」
俺だけ1日100時間戦争がはじまった。
>ご生活ありがとうございました!
>あなたの明日にはご期待しないでください!
作品名:1日6時間しかない世界で 作家名:かなりえずき