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司令官は名古屋嬢 第6話 『一部』

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 ミニバンに衝突した車は、それ以上動かない。エンジンはかかりっ放しだが、運転手は息絶えていた。
「そっちは大丈夫?」
「無事です!」
点呼を取る八事たち。幸いなことに、全員が無傷で済んだようだ。
「急いでここから離れるわよ!」
今の衝突がきっかけで、さらなる敵襲に見舞われえるのは確実だった。川の向こう岸にも届くほどの衝突音だったのだから。

『「小包」よりアルファへ、合流ポイントに到着した』
「了解。そちらへ向かう」
八事は走りながら通話する。相手の「小包」とは、自分たちを回収しにきた小型ボートのことだ。それで川を下り沖へ出て、この危険地帯から脱出する。
 河川敷へ降り、全速力で川へ走る彼女たち。近くで倒壊している鉄塔は、ちぎれた電線から火花を飛ばしている。
「畜生! 全員やられてる!」
「敵はどこへいった!?」
増援された敵の民兵たちが、彼女たちを探し始めていた。怒声が背中に届く。反響した声から位置を察知する特殊能力を、敵が持っていないことを祈ろう。
 川岸に小型ボートが浮かんでいるのが見えた。船頭である兵士が、赤外線ライトを振り、彼女たちに場所を知らせてくれている。

   パァーーーン!!! パァーーーン!!!

 ボートまであと20メートルを切ったところで、敵による発砲が始まった……。どうやら、勘のいい奴に発見されてしまったようだ。敵の数は20人ほど、ほとんどが拳銃を手にしている。夜闇の上に、素人の腕前とはいえ、この大人数ならたまたま命中してもおかしくない。下手に応戦するよりも、さっさと脱出するほうが安全だ。
 次々に飛んでくる銃弾に恐れを抱きつつ、八事たちはボートに乗り込む。何発かの銃弾が、ボートの近くで水しぶきを立てた。
「イテェ!!!」
川原の石で跳ね返った銃弾が、あの工兵の右足首に突き刺さった。彼は激痛でその場に転倒する。川原の砂利が音を立てる。
「時間を稼ぐ! 早く乗り込ませて!」
八事はそう言うと、狙撃銃を構える。
 暗視ゴーグルにより、スコープに明るく映し出される敵の民兵たち。照準はすぐに、そのうちの一人の頭部に重なる。鳴り響く銃声とともに、その敵は即死した。吹きだす温かい鮮血も、ゴーグルにしっかりと映し出される……。
 それからすぐ、2人目3人目と次々に、八事は射殺していく。敵の多くは恐怖心を抱き、身を伏せ始める。そのあいだに工兵は、仲間によってボートへ収容された。それを確認した八事は、威嚇射撃しながら、後ろ向きにボートに乗り込んだ。あとは一刻も早く、ここから脱出するだけだ。