火サスの犠牲者に選ばれた!
タイトル:未定
場所:温泉宿』
通知が届いたのは昨日。
国民からランダムに選ばれる火サスの犠牲者候補。
自分だけは選ばれないと思っていた。
「で、でもこんなの知らんぷりすれば……」
火曜日。
ガタイのいい男がやってきた。
「田中さん、ですね」
「ええ」
「では行きましょう」
羽交い絞めにされて温泉宿へと連行された。
あまりの力の差に抵抗する気も失せた。
まるでこれから出荷される豚みたいだ……。
火曜サスペンス開始。
登場人物とごくごく普通の会話をする。
殺されるのは開始から1時間後。
「ああ、俺の命も残り1時間かぁ」
開始1時間では誰が犯人なのかわからない。
このままじゃ……。
「そうだ、探偵を殺して俺が探偵になればいい!」
俺は凶器をもって探偵のもとへ向かった。
どうせこのまま待っていても俺は殺される。
だったら探偵を殺し、俺が探偵として犯人を追いつめてやる。
俺は豚じゃないんだ。
「なっ、なんだお前は!」
「問答無用~~!!」
やった! やったぞ! 探偵を殺した!
これで火サスは探偵の席が空く!
俺が必ず犯人を追いつめてやる!!
すると、探偵の手から紙がこぼれた。
『火曜サスペンスの犠牲者に選ばれました!
タイトル:未定
場所:温泉宿』
「こいつも犠牲者!? 探偵じゃないのか!」
紙の裏にはさらに説明が書かれているのに気付いた。
『なお、登場人物は全員が犠牲者候補です』
火サスに探偵も犯人もいなかった。
いるのは犠牲者候補がでっち上げた犯人と、
自分の殺人を知られたくないニセ探偵の俺しかいない。
「やってやる……犯人見つけてやるよ!!」
「ママ、今日の火曜サスペンス面白そうだよ」
「へぇなんてタイトル?」
『火曜サスペンス劇場 ニート刑事・田中の事件簿
~ 湯けむり温泉宿の大量殺人事件 ~』
作品名:火サスの犠牲者に選ばれた! 作家名:かなりえずき