月のあなた 上(2/5)
円形の中庭は、地球の絵を覆うガラスを囲むように緑の木々が配置されている。
吹き抜け構造の日照を活かしたもので、巨大や陶器の鉢植えからプラスチックのプランターの他、ガーデンワイヤーを使った模型もあり、人の背丈ほどのものから、二階部分に至りそうな蔦葉のキリンといったものまである。
水凪祇居が立っていたのは、丁度キリンの足もとだった。祇居の後ろからも、如何にもくだけた表情の男子たちがぞろぞろとやって来て、その肩を叩く。
祇居は一瞬連れを振り向いたが、すぐに日向の方に向き直った。
表情は静かだったが、目は何かを問いかけているように見えた。
日向は、真っ直ぐその視線を迎え撃った後、
「フン」
蜜柑の袖を引いた。
「みかんちゃん、いこ」
「う、うん…」
祇居にみとれていた蜜柑がはっきりと答えない内に、弁当袋を持ち上げて、早歩きに去ってしまう。
蜜柑は慌てておいかけつつ、校舎に入る間際、後ろを振り向いた。
祇居は、まだこちらを見ていた。
(※月のあなた Rerise 上(3/5)へ続く)
作品名:月のあなた 上(2/5) 作家名:熾(おき)