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熾(おき)
熾(おき)
novelistID. 55931
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月のあなた 上(2/5)

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 円形の中庭は、地球の絵を覆うガラスを囲むように緑の木々が配置されている。
 吹き抜け構造の日照を活かしたもので、巨大や陶器の鉢植えからプラスチックのプランターの他、ガーデンワイヤーを使った模型もあり、人の背丈ほどのものから、二階部分に至りそうな蔦葉のキリンといったものまである。
 水凪祇居が立っていたのは、丁度キリンの足もとだった。祇居の後ろからも、如何にもくだけた表情の男子たちがぞろぞろとやって来て、その肩を叩く。
 祇居は一瞬連れを振り向いたが、すぐに日向の方に向き直った。

 表情は静かだったが、目は何かを問いかけているように見えた。

 日向は、真っ直ぐその視線を迎え撃った後、
「フン」
 蜜柑の袖を引いた。
「みかんちゃん、いこ」
「う、うん…」
 祇居にみとれていた蜜柑がはっきりと答えない内に、弁当袋を持ち上げて、早歩きに去ってしまう。
 蜜柑は慌てておいかけつつ、校舎に入る間際、後ろを振り向いた。
 祇居は、まだこちらを見ていた。

(※月のあなた Rerise 上(3/5)へ続く)