風来坊旅日記 第一話 出会い
「と、言ってもお主に教えてやれることは少ないがな」
「そんな事はありません」
「分かった」
その日二人は空が暗くなるまで稽古をした。
「大体こんな感じだ分かったか?」
「はい、おおよそは」
「あとは応用だ日々の鍛練を忘れるな」
「分かりましたありがとうございました。」
その日稽古はそれで終わった。
翌朝、
町の若い衆がまたやってきた。
「辰じいまたごろつきどもがきた頼む」
辰吉は
「分かった。支度が出来しだいすぐに向かう。」
そう伝えて家の奥に入っていった。
信之丞も急いで支度をした。
辰吉は準備を整え出てきた。
「よし行くか」
「はい」
二人は会ってまだ4日だというのに昔からの師弟のような間柄になっていた。
二人は町についた。そこにはごろつき共が沢山いた。
二人は図ったかのようにごろつき共にせまり一人また一人と倒していった。
二人の呼吸はぴったりとあいごろつき共を倒していく。
ごろつきの一人に辰吉が問いただす、
「お前たちの親玉はどこにいる?」
「どこにいると聞かれて答える馬鹿がいるかよ」
辰吉は刀を教えて、
「言わねば殺す」と脅した。その気迫に負けたのか、
「分かった言う、言うから許してくれ」
「どこだ?」
「この先の賭場にいる」
「分かった。」と思い切り腹を殴り動けなくした。
辰吉が信之丞に
「あっちだ、いくぞ」と言った。
二人は賭場に乗り込んだ。
「なんだてめえら」
表の見張りを即座に倒し、
中に入る。
入るなり辰吉が、
「やはりお前だったか」
ごろつきの親分にそういった。
「久しぶりだな辰吉、お前には俺の子分が色々世話になったみたいだな。」
「お前まだ悪事を働いていたのか、足をあらったんじゃなかったのか?」
「こんないい商売簡単にやめられるかよ」
「俺が前お灸をすえてやったのに懲りないやつだ」
「うるせえ、野郎共やっちまえ」
賭場の中から複数のごろつきが出てきた。
二人はあっさりごろつき共をやっつけた。
あっさりしすぎてると辰吉が思っていると気配を消した剣客に後ろから斬られかけた、そこを信之丞が刀で受け止める。
辰吉は気配に気づかなかった。いや気づけなかった。
昨日の信之丞との稽古で疲れきっていたのである。
辰吉を安全なところに逃がすと、剣客と刀を交わした。
気配を消して襲いかかってきた事といいこの剣客は強い、と信之丞は悟った。
そこで、狭い賭場では決着がつかないと、近くの河原に場所を代えた。
辰吉はその間に親分を討ち取った。
これでこの戦いに意味はないのだが男と男の意地で決戦をしていた。
この剣客の名前は梁田宗八という。
元武士であり剣を得意としていた。出世間違いないと言われていたのだが、仕えていた家が不祥事を起こし、お家断絶、食い扶持を失った。
しかたなく武士の道を諦めその日暮らすがやっとという生活をしていた。
そこにならず者の用心棒の仕事が舞い込んできた。
背にはらは変えられぬと仕事を受ける。
仕事だからと割り切る事にしていた。
そして今ここにいる。
その事実を信之丞は知らない。が宗八とは戦いたいと思った。
最初に刀を交わしたとき思ったのだ。
二人は間合いを詰め一度刀を交える、すぐ離れ再度刀を構える。
何度か繰返しているとき、辰吉がすべて終わった事を告げた。
が今の二人はそんな事どうでもよかった。
剣客対剣客の勝負である。
辰吉は見守る事を決めた。
その後二人は一進一退。
気づけば1時間ほど経っていた。
二人を見ていた辰吉が叫ぶ、
「お前たちの実力は互角、しばし休戦せよ。」
その言葉にホッとしたのか疲れていたのかお互いにすっと力が抜けた。
二人は何も言わず同じタイミングで刀を下ろした。
と、同時に二人は笑いだした。
「ははは」
「はははは」
「ここまで互角とはな」
「全くだ。」
「これじゃ勝負がつかんな」
「そのようだ」
「はっははは」
「名前を聞いてなかったな」
「そういえば」
「拙者備前出身の浪人で浦上信之丞と申す。」
「拙者は、備中出身の浪人梁田宗八と申す。」
「私は剣豪たちの足跡を調べる旅をしている。今は旅の資金を稼ぐために、助っ人をしている。」
「なるほど、私は食い扶持に困り用心棒の仕事をしていた。主がいなくなった今となってはただの浪人だがな」
「そうだな、で、これからどうするんだ?」
「まだ、決めてないがまたどこかの用心棒にでもなるかな?」
「もしよければ拙者と一緒に旅をせぬか?」
「貴殿とか?まだ会って間もない俺と?」
「ああ、実は仲間を探していてな、宗八殿と刀を交えていて思ったのだ。この人となら楽しい旅になると」
「俺なんかでいいのか?」
「願ってもない」
「そうかなら行くか一緒に」
「良かった」
「では明日の朝またここで会おう旅支度を済ましてくる。」
「ああじゃあ明日な」
二人は別れ信之丞は辰吉の家に帰った。
「信之丞お疲れさん」
「辰吉さんこそお疲れさまです。」
「報酬は口入れ屋で貰ってくれ」
「分かりました」
「あいつを倒したからもうこの辺は大丈夫だ、静かに暮らせそうだよ」
「それは良かった」
「道中気をつけてな」
「はい、ありがとうございます、辰吉さんもお元気で」
「ああ、ありがと」
二人は床についた。
翌朝、
「お世話になりました」
「達者でな」
信之丞は辰吉の家を後にした。
口入れ屋で報酬をもらい、約束の河原へ向かった。
するとそこにはすでに宗八の姿があった。
「すまん遅くなった」
「いやわしが早く来すぎたのだ、気にするな」
「ならばよい、さ、行くか」
「ああ、どこに向かうのだ?」
「そうだな、北陸のほうに向かうか。」
「北陸か分かった」
こうして二人の旅が始まった。
この先二人になにが起こるのか、それは次回のお楽しみ
作品名:風来坊旅日記 第一話 出会い 作家名:緑茶