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風来坊旅日記 第一話 出会い

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信之丞は旅をしている。
さすらいの旅、特に行くあてがあるわけではない。
気ままな一人旅である。
剣の腕には多少自信があった。
小さい頃から剣術を習っていたからだ。
信之丞は今美作にいる。
有名な宮本武蔵が生まれた美作に来て見たかったのである。
五輪の書、巌流島で有名な宮本武蔵である。
「無敗」という響きが好きだった。
幼い頃から憧れていた。
まず、生まれ故郷からほど近い美作にきた。
信之丞の生まれは備前の国。
備前といえば刀というくらい有名な土地である。
そこで育った信之丞は昔から剣術、刀が好きだった。
美作にきて、信之丞は思う。
「ここがあの宮本武蔵の原点かここから俺の旅は始まるんだな」

信之丞はそこで暫く考えに浸っていた。
まずお金を作らないといけない。
まだまだ長旅だ。
信之丞はとりあえず口入れ屋に行き、仕事を探した。
5日間住み込みで働けるという仕事を見つけた。
「5日間屋根の下で寝れるしお金も貰えるいい仕事がみつかった。」
早速信之丞は書いてある地図を頼りに歩き方だした。
町からちょっと離れた所にその家はあった。
「見つけた。あれだな」
信之丞は扉を叩く。
「ゴメンください。口入れ屋の紹介できました。」
「はいはい今空けるよ」
中から年配の声が聞こえた。
「やっと来てくれたか待っていたよ。」
「拙者、名を信之丞と申します。5日間お世話になります。」
「硬い挨拶はいいからなかに入って。」
言われるがままになかに入る。
「ま、ゆっくりしておくれ」
「して、仕事というのは?」
「そのうち分かるよ。」
「そのうちですか・・・」
「ここに座りな。」
「ではお言葉に甘えて」
信之丞がキョロキョロ家の中を見回していると
「どこから来たんじゃ?」
「備前からです。」
「そうか」
老人はお茶をすすりながら頷いていた。
信之丞は考えていた。
「仕事とは一体なんなんだ?じいさん一人の家に住み込みとは何をするんだ?口入れ屋の紹介って事は剣術が関係しているのかな?狙われてるじいさんには見えないけどな」
などと思っていたら、
老人が
「お前は余計な事考えんでいい」
っと言ってきた。
信之丞は考えてた事を見破られてしまった。
この時点で信之丞は悟る。
「このじいさん只者じゃない」と、
それからはすっぱり考えるのをやめた。
それを知ってか老人は機嫌がよくなった。

それからまもなく事件が起きる。
「辰じい、辰じい居るか?」
町の若い衆がやってきた。
「わしなら居るぞ」
息を切らしながら若い衆が話を続ける。
「大変なんじゃ、と、となり町のやつやつらが」
「勝助落ち着け、ゆっくり話せ。」
辰じいが勝助に水を差し出す。
「すまねえ。実はとなり町のごろつきどもがまた縄張り拡げるためにわしらの町で暴れ回っとる。」
勝助のとなりにいた稲作が続ける。
「この間辰じいが撃退してくれた奴等とはまた別の奴らでよ。前の奴らより人数が多いんだよ。」
勝助が割ってはいる。
「しかも今回は強そうな剣の使い手までいるんだ。俺達にはどうしようもない辰じい頼む。」
辰じいは
「分かったわしがなんとかする。」
その言葉を聞くと若い衆は帰っていった。
横で聞いていた信之丞はそういう事かと悟った。
信之丞を見て辰吉は笑った。
その日は夜も更けていたため二人とも床に着いた。

翌朝、辰吉が信之丞を起こした。
「お主の剣の実力を知りたい。」
当然である。使い物にならなくては足手まといになるだけだ。
信之丞はすべてを悟り剣を振るう。
真剣ではなく木刀であるがなかなかの太刀筋である。
信之丞は元々剣術には自信があったが、誰かと戦う事はなかった。だから自分の実力がどれくらいのものなのか実際のところ分かっていなかった。
剣を振っていると辰吉が、
「もうよい。今度はこれじゃ、」
「なんでしょうか?」
無言の辰吉をみて、信之丞は悟る。
「言われるがままにしよう」と
辰吉はそれを見て笑った。
信之丞は動じず集中していた。
すると、
「お主の実力は大体分かった。頼むぞ。」
辰吉はそういうと部屋の奥に入っていった。

しばらくして辰吉が出てきた。動きやすい格好に木刀。
それに脇差を指して出てきた。
出発の合図である。
信之丞はあとに続く。
信之丞はわくわくしていた、辰吉の実力を見たことがないこととはじめて自分の腕が役にたつ。
その思いで一杯だった。
その道中いきなりやくざものに絡まれた。
前に辰吉が壊滅させたやくざものらしい。
辰吉は信之丞に目で合図する。
それを信之丞は悟る。
この二日間四六時中繰り返していたそれはここで活かされるのである。
二人はあっという間にやくざもの5人を倒してしまった。
長年の剣友のような連携に信之丞は自分にびっくりしていた。
「わしの見立ては間違ってなかったの」
辰吉はぼそっとつぶやいた。
そしてまた歩きだす。

ふたりはようやく町に着いた。
まずごろつきどもの居そうなところを探す。
と、探すまでもなく木刀をもち脇差を指している二人組を見つけると声をかけてくる。
「おめらここで何してるんだ?」
辰吉が
「ここいらで暴れてるごろつきを懲らしめに参りました。」
「は?懲らしめる?お前らが?笑わせるな、」
「このじいさん前にも見たことあるぞ、松蔵親分のところにいって一人で壊滅させたっていう辰吉じゃねえか?」
「あの辰吉か」
「横の奴は見たことないな」
「どのみち俺らが倒すからいいけどよ、ははは」
「お前らやっちまえ」
信之丞と辰吉は合図をする。
いつもどおりの合図。
が、ごろつきも頭を使う。信之丞と辰吉をじわじわと離していく。
これでは連携が取れない。
信之丞は本格的に一人で戦った事はない。内心焦っていた。がもうすでに遅い、
連携が取れなくなってしまった。自分の剣を信じるしかなかった。
信之丞は気づいた悟る、相手の動きに合わせる。
相手の太刀筋を判断しそれより早く刀を出す。
信之丞は実戦の中で学び習得していった。
信之丞の近くにいたごろつきを倒した頃、辰吉も自分の周りのごろつきを倒していた。

やっぱり強い。辰吉さんは強い。と確信した瞬間でもあった。
その日はそれ以降出てくる事はなかった。
二人は辰吉の家に帰った。
信之丞は辰吉に
「強いですね。さすがです。」と言うと辰吉は
「いや信之丞もなかなかやるなどこで剣術を?」
「幼い頃から家の近くの剣術道場に通っていました。」
「それだけではなかろう?」
「さすがですね。剣術道場は小さい頃だけであとは山にこもって修行したり、腕のある剣士に稽古をつけてもらいました。」
「それであの太刀筋か納得だ。」
「辰吉さんはどこで剣術を?」
「昔武士をしていたからなそこで」
「武士だったんですか」
「ああ昔の話だかな」
「辰吉さん是非私に稽古をつけてくれませんか?」
「ああそういうと思ってたよ。明日早朝」
「分かりました。」

翌朝、
「ではよろしくお願いします。」
「うむ」
二人は木刀で稽古を始めた。
「信之丞いいうち込みだ。」
「辰吉さんには敵いません。」
「わしはもう歳を取りすぎたお主にわしの心技体を伝授しよう。」
「私で宜しいのですか?」
「ああ信之丞ならわしも悔いはない」
「ありがとうございます。」