アザーウェイズ
当初、機兵と訓練するたびにいつも同じ考えがよぎっていた。
あの男を殺した理由が、私怨だったのか、それとも国同士の敵対行動の故だったのか。
どちらにせよ、まるであの男の死が文字通り引き金となって日中双方に多くの死傷者が出始めてしまい、そして戦線も次々と拡大していた。もう考える必要もないことなのかもしれなかった。
それに、その敵対行動は、国民感情という巨大な私怨が引き起こしたものかもしれないのだから。
川井の行動は最初理解できなかったが、それも今となっては理斗の自衛隊員としての仲間意識を確定的にするものとして理解できた。
『引き金は軽い』
機兵を操縦するたびに、かつて言った古城戸科長の言葉が思い返される。
一人の敵兵を殺した理斗には、もはや自衛隊員として日本を守る道のみが残されているとしか思えない。
だが、夢に見た日本のように、自分にも他の道があったのではないかと、時折理斗は思いに耽った。
(終)