The SevenDays-War(黒)
焼ゴテが少女の下腹部に当てられる。
肉の焼ける音、肉の焼ける匂い。
ルドラは動けなかった。
目の前の少女は貴重な素材だ。浪費させる訳にはいかない。
それでも、ルドラは動けなかったのだ。
新たな囚人が連行されてきた。同じように後ろ手に木枷を嵌められており、両足首を繋ぐ鎖がジャラジャラと音をたてながら地面を削っている。
ハンマーで頭をかち割られた死体に気付いた囚人は、これから自分が辿る未来をそこに見たのだろう。無駄と知りながらも逃げ出した。
看守の剣が背後からその心臓を貫く。
囚人は、地に伏した身体を引き摺られ、少女の足元で息絶えた。
「さぁ、何が出る」
ルドラは魔界の波動が強まってゆくのを感じていた。
止めなければならない。本来ならば、世界を統治する神の使いとして、神の敵の誕生を阻止しなければならない。
ルドラをこの世界に留めている神との契約が、任務の遂行を促し、強制する。
「断る」
明確な拒否。
千年もの間、自らの信念を曲げて付き従っていた。
その間、戦いの提供というルドラが求めた交換条件は、ただの一度も与えられたことがない。
千年の永きに渡り求め続けた戦いが、たったいま目前に迫っているのだ。馬鹿げた一方的な契約になど従っている場合ではない。
ルドラの強固な意思は、契約による強制を撥ね退け続けていた。
丸太杭に縛り付けられたままの少女に変化が現れた。
「ああああああああ……!!」
焼ゴテを当てられても悲鳴を発しなかった少女が吼える。その声に呼応するように、少女を中心とした地面に七芒の方陣が描き出された。
ルドラは人間への擬態を解き、黒天馬に跨る。
姿を消すことも止め、黒一色の巨体を人の目に晒す。ただの人間であれば、その姿を見ただけで正気を失い、殺気を浴びれば身体の自由を奪われる。
「邪魔はさせない。誰にも、たとえ神であろうともな!」
魔界という名の牢獄に幽閉されている古代の神々。その数は計り知れず。いまここに現れようとしているのは、そのうちのたった一人だ。
ルドラは逸る心を抑え、背の黒剣を開放させる。“神の敵”が誕生するまでの間、千年振りの高揚をじっくりと愉しんでいた。
方陣の中心に位置する少女の頭上、約十メートルほどの上空に、煙のような物質が集まり出していた。
肉の焼ける音、肉の焼ける匂い。
ルドラは動けなかった。
目の前の少女は貴重な素材だ。浪費させる訳にはいかない。
それでも、ルドラは動けなかったのだ。
新たな囚人が連行されてきた。同じように後ろ手に木枷を嵌められており、両足首を繋ぐ鎖がジャラジャラと音をたてながら地面を削っている。
ハンマーで頭をかち割られた死体に気付いた囚人は、これから自分が辿る未来をそこに見たのだろう。無駄と知りながらも逃げ出した。
看守の剣が背後からその心臓を貫く。
囚人は、地に伏した身体を引き摺られ、少女の足元で息絶えた。
「さぁ、何が出る」
ルドラは魔界の波動が強まってゆくのを感じていた。
止めなければならない。本来ならば、世界を統治する神の使いとして、神の敵の誕生を阻止しなければならない。
ルドラをこの世界に留めている神との契約が、任務の遂行を促し、強制する。
「断る」
明確な拒否。
千年もの間、自らの信念を曲げて付き従っていた。
その間、戦いの提供というルドラが求めた交換条件は、ただの一度も与えられたことがない。
千年の永きに渡り求め続けた戦いが、たったいま目前に迫っているのだ。馬鹿げた一方的な契約になど従っている場合ではない。
ルドラの強固な意思は、契約による強制を撥ね退け続けていた。
丸太杭に縛り付けられたままの少女に変化が現れた。
「ああああああああ……!!」
焼ゴテを当てられても悲鳴を発しなかった少女が吼える。その声に呼応するように、少女を中心とした地面に七芒の方陣が描き出された。
ルドラは人間への擬態を解き、黒天馬に跨る。
姿を消すことも止め、黒一色の巨体を人の目に晒す。ただの人間であれば、その姿を見ただけで正気を失い、殺気を浴びれば身体の自由を奪われる。
「邪魔はさせない。誰にも、たとえ神であろうともな!」
魔界という名の牢獄に幽閉されている古代の神々。その数は計り知れず。いまここに現れようとしているのは、そのうちのたった一人だ。
ルドラは逸る心を抑え、背の黒剣を開放させる。“神の敵”が誕生するまでの間、千年振りの高揚をじっくりと愉しんでいた。
方陣の中心に位置する少女の頭上、約十メートルほどの上空に、煙のような物質が集まり出していた。
作品名:The SevenDays-War(黒) 作家名:村崎右近