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The SevenDays-War(黒)

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(序) 銀の歌詠みと白髭の聖者


 淡いブルーのローブに身を包み、銀の長い髪をなびかせて歩く少女が一人。コツコツとブーツの靴音を立て、荘厳な石造りの回廊を歩いていた。
 目指すはエルセント大聖堂、大司教執務室。

「入るがよい」
 少女が扉を叩く前に、入室を促す部屋主の声がする。
「よう来たの。ミース・T・キャロライナ。そろそろ来る頃じゃと思っておった」
「なんでもお見通しなのね」
 キャスはフフンと笑う。
「掛けなさい」
 大司教に勧められるまま椅子に座り、直後に表情を引き締めたキャスは、時間が惜しいとばかりに本題に入った。
「ルドラのこと、知りたいんでしょ?」
 大司教の眉がピクリと反応する。
「誤魔化しは通用せんようじゃの」
「しないようね」
 一瞬の沈黙。
 二人の視線が交錯する。
「ほっほっほ。何が知りたいのじゃ?」
 数瞬の後、大司教は緊迫した空気を笑い飛ばした。

「知りたいのはあたしじゃない。アイツに話して欲しいのよ。本当のことを、ね」
「そうじゃな、いづれは話さねばならぬとは思っておった。約束しよう」
「ありがとう、おじいちゃん」
 キャスは十八という年齢に相応しい微笑みを浮かべた。

「あたしはルドラの黒剣に精神を奪われた。けど、黒剣の中でも意識はあった。黒剣にはあたしの他にもたくさんの意識が溶け込んでいたわ。時間が過ぎることで自分という存在が希薄になって行くようね。理由は分からないけど、ルドラは黒剣の中にいるあたしに話しかけていた。だからあたしは自分という存在を保っていられたんだと思う」
 大司教は目を閉じて白い顎鬚をしごきながら耳を傾けている。
「ルドラは正真正銘の『黒炎の騎士』だった。黒剣の中で千年の記憶を見た。いまのあたしは魔大戦の全貌も知っている。それは……」
「待つのじゃ、キャス」
 大司教はキャスの言葉を中断させる。
作品名:The SevenDays-War(黒) 作家名:村崎右近