ほんとうの日記
《おんがくしつから かえるとちゅうに なかのくん と へんみくん が わざと ぶつかってきて しょうかき の ほうに ぶつかると わらって なかのくんが あやまれ って いってきて あやまると きもい って いつもみたいに おなかを ばちん って つよくたたいた しょくいんしつ で かとうせんせいに いって かえり えきで なかのくん と へんみくん が いて ごみばこに ぼくの おとしものが あるから ひろえって いって ごみばこを みたら あたまを ごみばこに くっつけられて おまえのいえだ って いった ぼくは ぜんぶ おぼえている あいつらが したことを いっしょう わすれない ころしたい ばらばらに して ころしてやりたい ぼくが しぬほど ころしてやりたい》
あなたは、日記をつけている?
その日記に、あなたのほんとうの気持ちを書いている?
正直な気持ちが書かれていない日記の中には、ほんとうのあなたはいない。
その日記の中にいるのは、嘘のあなた。
その嘘のあなたには、ほんとうに欲しいものはわからない。
他人が読むはずがないその日記の中でさえ言い訳をしているあなたには、日記の中で自分に嘘をつくあなたには、ほんとうのしあわせなんてつかめない。
もしあなたに、願いがあるのなら、かなえたい夢があるのなら、今日の日記にほんとうのあなたを書いてみてほしい。
日記に書いたほんとうの気持ちは、あなたの中でふくらんで、書けば書くほど、その願いはつよくなる。
言葉は約束なの。
日記は、あなた自身との約束。
ピンク色の洞窟の夢を見ていた。遥か向こうに光が見え、わたしはその光に向かって一生懸命坂をよじ登るけど、出口はただ向こうの方に見えているだけ。真っ暗な底の方からわたしを呼ぶ声が聞こえる。誰かがわたしの名前を呼んでいる。何度も何度も叫ぶように名前を呼ばれても、必死で岩をつかんでいるわたしは声を上げると落ちていってしまいそうで、その声に答えることが出来ない。その声は、どこで聞いたことがある声。ずいぶん長い間聞いていない誰かの声。その声がわたしの声だと気付きかけた時、声は聞き覚えがないチャイムの音にかわり、わたしを夢から引き離していった。
初めて聞くこの部屋のチャイムも、この男との日常の中で、すぐに聞き慣れたものになっていくのだろう。チャイムはわたしをせかすように何度も鳴り続ける。かわいそうに彼女さん、合鍵持ってないのね。目覚めかけた男をベッドに残し、わたしは裸のままドアを開けに行った。