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小さな森に暮らす
おじいさんと少年


畑で育てたものを食べたり
狩りをしたり釣りをしたりして

のんびりと暮らしていた。


ある日おじいさんが死んだ。
湖のほとりで見つかった。
崖の上にはおじいさんの日記が落ちていた。
おそらく足を滑らせて落ちたのだろう。


おじいさんのお墓を作っていると
森の動物達が
ぞろぞろと集まり
みなとても悲しんでいるようだった。



おじいさんの日記が見つかり
僕は自分が小さい頃から
どんな風に育てられたのかと知りたくて
読み始めた。

初めて僕に弓矢を教えた日
僕が高い木に上って果実を取ろうとして
落ちて怪我をした日
僕が周りの動物と仲良くしているのを見た日
川に溺れていしまった僕が熊に救われた話


僕は自分では気づかなかったものの
どうやら周りの動物に助けられながら
育てられながら生きてきたようなのだ。


たまにおじいさんは言っていた
「お前には森の神がついてる。
 感謝を忘れないように、それと気をつけなさい
 神を怒らせてはいけないよ。」


それから僕は
一人での生活が始まった。
なかなか食べ物がうまく手に入らない。
釣りも狩りも下手くそなのだ。


でも困ることはなかった。
釣りをしていれば
狐がやってきて魚を水際に追い込んで取る方法を
教えてくれた。
弓矢で狩りをしていれば
鷲が遠くで弱っている鹿の場所を教えてくれる。
木の実を探していると
リス達が場所を案内してくれる。

どうやら彼らはまるで
おじいさんの続きをしているようだった。

気づけば僕は彼らと喋れるというか
意思疎通ができるようになっていたのだ。
全部ではないけれど
いつも会う狐と鷲と熊。
彼らとは友達になれたようだった。



ある夜寝ていると夢を見た

森の中にある大きな山のてっぺんが光っていて
そこにいくと
「これ以上森にいてはいけない。
 早く出てきいなさい。」
と言われた。
何をいってもそれ以上話してくれない。
同じ言葉の繰り返し。

僕は起きた後も
夢をしっかり覚えていた。
それでも森での生活が楽しくて森を出ていこうとは
思わなかった。

しかしその夢は毎晩続いた。


ある日その夢に出てくる山のてっぺんに
行ってみることにした。
そこで夢の続きを知るために
「来たぞ、僕の質問に答えてくれ。」と

「なぜ森をでなければならないんだ」
「動物のみんなも仲良くしてくれているし
 なんで出て行かなきゃいけないんだ」と


答えがあった。
晴れていた山頂にある大きな岩に突然雷が落ちた。
雷が落ちた場所は土埃でもわもわとしていて
よく見えない。が
強い風が吹いて
大きな岩の上に真っ白な狐がいた。

狐が喋った
「俺がこの森の神だ」
「なぜ出て行かない」と

僕は狐が喋ったのに驚くものの
夢の答えが知りたくてそれどころじゃなかった。
「ここでの暮らしになんの問題があるんだよ。
 周りの動物たちとも仲良くしているし
 十分に暮らせていけている。
 なにがだめなんだよ」

狐は鋭い目で
こちらを見ながらこう言った
「俺はお前を見てきた。
 動物と仲良くしているのも知っている。
 おじいさんが死んだ時から
 森の動物達がお前を育てているのも知っている。」

「だから出て行けと言っているんだ」



この狐が何を言っているのか全くわからない。
出ていく必要が全くわからない。
イライラしてきたが
神らしいのであんまり怒ると怖そうだから
質問を変えてみた。

「おじいさんはお前のことを知っていたのか?」

「もちろん知っていた。お前が小さい頃に
 俺に会いにこうやって来たこともある。
 その時にお前を守るように言われたぞ。」

「…じゃあなぜおじいさんを守ってくれなかったん
 だよ…」

「お前を守るようにしか言われてないからな。
 なんでおじいさんが死んだのか、
 お前しらないのか?」

「崖から落ちたんだろ。
 俺が木から落ちた時みたいに助けてくれれば
 よかったじゃないか…」


「やっぱり知らないじゃないか。」
そこまで言うと狐は何処かへ歩いて行ってしまった。
もう姿は見当たらない。


僕はおじいさんが崖から落ちたんだと思っていた。
それが違うってどうゆうことなんだろう。。



家に帰った僕はおじいさんの日記を
読んでみることにした。
最初の方は僕が小さい頃の話ばっかりだった。


おじいさんは
僕が動物たちと仲良くしているの怖がっていた。
そして動物たちと意思疎通していることを
羨ましがったいた。


日記の最後の日
おじいさんは
山のてっぺんが光る夢をみて
そこで神に会う約束をした。と
書いてあった。



やはりわからない。。
おじいさんが死んだのは崖から落ちたのが
原因じゃないか。
あの狐俺を騙して森から出て行かせようと
してるのか…。


僕はもう一度
狐に会いに山に行くことにした。



狐は待ちくたびれたように
あくびをしながら岩の上にいた。
「よお遅かったな。」

「なんでおじいさんがお前に会いに来たことを
 おしえなかったんだ。
 お前と何を話したんだ!!」

狐の目が鋭くこちらを睨むと
喋り始めた
「あの日じいさんは夢のお告げがあったから来たと
 言っていた。
 俺が呼んだんだから当たり前なんだが。
 二人でこの森を出て行けと言ったんだ。
 悪いことが起こる前に。」

「なんだよ悪いことって!!」

「お前のことだよ。森の動物と仲良くしすぎている。
 お前いま何匹かの動物と喋れるだろう?
 それがまずいんだ。
 それをじいさんにも言ってやったんだ。」

「なにがまずいんだよ、楽しくやっているじゃないか」

「じいさんも同じようなことを言っていたな。
 お前じいさんの日記読んだんだろ?
 何も書いてなかったのか?」

「何もなかったよ。最後の日記にはお前に会いに行くと
 言った日だった。
 その日におじいさんは死んでしまったから
 その日が最後だったよ」

「じいさんの日記
 最後じゃなくて一番後ろのページ読んで見ろよ」

日記を取り出そうとして下を向いた時
狐が消えていくのがわかった。

おじいさんの日記の一番最後のページにはこうあった
「山の山頂で神と会うことが出来た。
 彼は森を出て行けと言っていた。
 うちの坊主のことを心配しているようだった。
 坊主は森の動物達と仲が良すぎる。
 それは危険な力なんだと。
 今に喋れるようになるだろう。と。
 羨ましかった私は神に
 私が死ぬまではその力を私にください
 と。
 神は姿を消した。なぜかニヤニヤ笑っていた」

「今私は湖の崖の上にいる。
 この森の全ての生き物の声がきこえる。
 泳いでいる魚、飛んでいる鳥、
 ネズミを捕まえている狐とそのネズミの声
 なんて素晴らしいんだ。
 森をこんなにも感じれるなんて。」


そこで日記は終わっていた。

俺は納得のいかないまま山降りようとした時
後ろから狐に
「じゃあな」と言われた。

そんなこと言われなくても二度と来るもんか。


その瞬間から
森の全ての声が聴こえはじめた。
最初は大きな動物の声
いつもの熊と狼と鷲だ。
鷲に話しかけて呼んだら来てくれた。
作品名: 作家名:Iguana.T.A