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ゴキブリ勇者・医者編(その2)

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彼らは途方にくれる俺を助けてくれた。
しばらく家に泊まってくれと、逆に頼まれてしまった。
優しさが辛い。
俺は彼らの家の縁側にぼけっと座り、あの人の姿を何度も思い出していた。


「こんにちは!」


彼らの娘が、なにも知らずに俺に微笑みかける。
俺はぼんやりと笑った。


「こんにちは」


彼女はニコニコと笑いながら、俺の隣に歩いてきた。


「アイちゃんは元気いっぱいだね」

「うん!先生がいると元気だよ!」


両親の影響で、アイちゃんは俺のことを先生と呼ぶ。
無邪気な顔で笑う彼女は、とても輝いていた。


「先生、お菓子ちょーだい!」

「うーん。ごめんね、今は持ってないんだ」


俺は自分になにか違和感を感じながら、彼女の方を向いた。
アイちゃんは、ちょっと驚いた顔をした。


「えー!じゃあ、誰に貰えばいいんだ……」

「ママはくれないの?」

「うん……どうしよう」


真剣に考え込む姿に、俺はもう一度笑った。


「ごめんな、エミ」


彼女は不思議そうな顔をした。
俺はその原因がしばらく分からなかった。


「エミって誰?」

「えっ?」


俺がいる縁側は陽の光が柔らかく届き、ぽかぽかと暖かい。
ここはあまりにも平和だ。
なのに、そこにエミが立っているように感じた俺は、どうかしてしまったのかもしれなかった。


「エミ……!」


彼女は俺の娘じゃない。
エミも俺の娘じゃない。
分かりきったことがすっかり分からなくなった俺は、小さな女の子にすがり付いた。
そして、戸惑う彼女に泣き叫んだ。


「ごめん……ごめんな……!なんで俺は……どうして……!!」


異様な声を聞き付けた彼女の父親が、焦って俺に駆け寄った。


「どうしたんですか!?先生!」


彼は娘を俺から引き離そうとしなかった。
彼の優しさにつけこんで、俺は泣き続けた。
もしかしたら、エミと何度も叫んだかもしれない。
俺を殺してくれと、とんでもないことを彼に頼んだかもしれない。
しかし、気がつくと俺はベッドに寝ていた。
そばにはマコト君達が暗い顔をして座っていた。