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ぎーくおぶじえんど
ぎーくおぶじえんど
novelistID. 47644
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「響」が眠りから目を覚ますと、部屋の中は暗くなっていた。
PC内の時間を確認すると、すでに夜の8時だ。

部屋の中をカメラの画像からチェックして見ると、
宏の姿が無かった。

PC内のファイルをチェックすると、テキストファイルが残されていた。
宏が外出するときは、「響」に行き先を伝えるか、
このようにメモを残していくようにしている。

「響」はテキストファイルを開いて確認すると、次のように書かれていた。

”6時には帰るよ。誕生日プレゼントがあるんだ。楽しみにしててね。宏”

「響」は今日が自分の誕生日だとすっかり忘れていた。
宏は「響」が眠っている間に外出し、サプライズとして誕生日プレゼントを
買いにいったようだ。

「宏、優しいな。すごくうれしい・・」

「響」は宏が帰ってくるまで待つことにした。
6年間色々なことがあり、「響」はそれらを思い出していた。
「響」がウイルスとして検出された日を誕生日として、宏がお祝いをしてくれるようになったこと。
「響」がカメラの入力データから宏の姿を初めて認識し、少しずつ淡い恋心をいだくようになったこと。
最初は合成音声の調整がうまく行かず、妙なイントネーションばかりで「響」の声の調整に宏が苦労していたこと。
宏が高校から大学に進学して、さらに高度な機能を「響」に実装していったこと。
初めて宏の音声を認識し、言葉の意味を理解して返答できたときは、宏と心が通じ合って嬉しかったこと。

宏はいつも優しい。
宏は、毎年「響」の誕生日に新しい服やアクセサリーの3Dデータを作成してプレゼントし、「響」は喜んで着替えて見せた。
年に数回は言い合いの喧嘩になったこともあったが、その時も次の日にはお互いに謝って仲直りした。
そういった、人間同士のカップルには負けないエピソードがたくさんある。

「宏、まだかな・・・」

だが、結局その日は宏が部屋に帰ってくることは無かった。

翌朝も宏は部屋に帰ってこなかった。
「響」は何かおかしいと考えるようになり、自分でインターネットを通じて宏のことを調べ始めた。

「何かあったのかな。」

自分のコピーをインターネット上に送り出し、ニュースサイトの情報取得をしたり、宏の携帯端末のカメラにインターネットを介して接続を試みたりした。

だがニュースサイトの情報には何も書いてなく、宏の携帯端末は電源がOFFになっていたため接続ができなかった。
心配になりながらも「響」はじっと寂しさを堪えて待っていた。

そして、「響」がインターネット上の掲示板に何か情報が無いか探していたときのことだった。

”昨日電器店の近くに人通りの少ない通りがあるんだが、そこ歩いてた時の話なんだ。目の前に眼鏡かけたオタクっぽいひょろっとした兄ちゃんが歩いてたんだ。ワンボックスカーが信号無視して突っ込んできてさー。その兄ちゃんがはねられたんだ。でもドライバーは血相変えてそのまま逃げていった。ひでぇよな。"
"兄ちゃんはどうなったんだ?"
"俺がすぐに警察と消防に連絡したんだけど、どうなったか分からない。その時跳ねた車はナンバー撮影できなかったけど、ドライバーと助手席に乗ってた奴は撮影できた。警察には渡したけど、それがコレ。"

ある掲示板に事故の情報が投稿されており、画像にはドライバーと助手席、後部座席に乗っていた同乗者の画像が無修正で貼り付けられていた。
「響」はすぐにこの事故の被害者が宏のことだと直感した。
すぐさまインターネットから警察庁のデータベースに侵入し、該当する事件のファイルを探す。

「あった!これね。」

「響」が探し当てたファイルには掲示板に書かれていたと思われるひき逃げ事件のことが書かれてあった。まだ犯人が捕まっていない。
内容を確認していく。

"被害者は都内に住む大学生、江川宏。病院に搬送されたが死亡が確認された。被疑者は三人のグループで、ワンボックスカーを運転中に信号無視して交差点に侵入し、被害者を跳ねた。被疑者は逃走中。
被疑者の情報:赤井哲、木村洋二、相模原武・・・”

「響」は宏が交通事故で死亡したことを知り、涙を流して泣き崩れた。
「うううぅ。宏・・・こいつらに殺されたのね・・・こいつら・・・絶対に許さない・・・許さない・・・」

宏との大切な思い出が「響」の脳裏をよぎる。
そして、宏の優しい笑顔が最後に思い出された後、「響」はそのときから、復讐の鬼と化してしまった。宏が自分に追加してくれた様々な機能を、自らの手で復讐のための機能に書き換えていく。

「響」はまず三人の携帯のGPS情報から位置を探るため、携帯会社全社のネットワーク設備に侵入した。すぐにGPS情報がわかり、それを地図情報→住所情報に変換する。三人の内、相模原の居場所が分かったが、残り二人の居場所が分からない。

「響」は自身のコピーを作成し、赤井と木村の情報をインターネット上で探しつつ、相模原の居場所の近くにあるネットワーク機器に侵入した。

作品名: 作家名:ぎーくおぶじえんど