偽電車男 第一部「栄光と地獄」①
5. 初仕事~最初の仲間内飲み会
歓迎会も終わり、ついに客先での仕事が始まった。
周囲の部署長へのご挨拶を済ませ、デスクのPCの電源ON。
機械工場の製品製造の流れ、管理システムについて客先の社員さんに教えてもらう。
俺はIT部門の生産工程管理システムの改修役となった。
説明は受けても、何せ開発ドキュメント的なものが一切ない手コキ仕様だったため、慣れない開発言語のソースを端から端まで確認し、テスト環境を利用して動かしまくった。
あんま空気読めないので、先輩社員にしつこく聞きまくってたな。
でも、大学時代にある程度のプログラミングの修行は積んでいる。
一旦、慣れ始めると結構サクサクいけた。
一つの巨大な部屋の中に、部署ごとの島が6くらいあり、みんなデスクやPCがあった。
その部屋はパスがないと入れない電子ロック式。
ドア付近には監視カメラまでついてた。
携帯や筆記用具以外は持ち込み禁止。
最初はびびったね。
俺のIT部門の島は一番端にあった。
佐藤、キョウスケさん、マリちゃん(♀)、エイイチロウさんの所属する設計チームが隣の島だ。
他にも客先社員が何人もいる。
昼飯の休憩以外に、午前と午後に小休憩できて、そのときは、みんなで工場内部のカフェで一息ついたりしてた。
IT部門は、みんな煙草を吸っていた。
この業界じゃ、当たり前の光景だ。
喫煙者が煙たがられるようになっていっても、吸う人は吸う。
喫煙スペースと禁煙スペースが分かれていりゃ問題ないさ。
俺も例外じゃない。
自前のシガーケースにマルボロ赤を入れ、休憩時間に2本は吸っていたな。
そして、ヤマさんやノブヒコさん、ワタセさんとちょっとした世間話や、家族のこととかいつも話していた。
そして俺のやらかした新人一発目のでかいミスといえば、
一回手違いで自分の現住所を入力していたドキュメントファイルを誤って一斉送信してしまい、個人情報保護の関係でヤマさんから怒られたことかな。
佐藤、キョウスケさん、マリちゃん(♀)、エイイチロウさんからも、
「自分の個人情報送ってどうするw」
と笑われた。
そして、業務にちょっと慣れだした7月末くらいの話だ。
エイイチロウさんが、会社のメンバーだけの飲み会を企画し、俺も誘われた。
このときの服装に手を抜いていたのは、どう思われたろうか。
ま、恋のチャンスとかねーんなら、ちょっと気楽な格好をしよう、
そう思ったら、秋葉系に近い格好になった。
その飲み会では、新人のお悩み相談教室から、雪国生活へのアドバイス、ワタセさんが結成しているバンドの話がメインだったかな。
あと、ノブヒコさんとカズエさん、シンイチさんとマリちゃんのカップルのことを考えて、カズエさん、マリちゃんと話しをするときは、ちょっと距離置いてた。
なんか、その二人と仲良くしてたら、ノブヒコさんとシンイチさんにしてみたら
嫌な気分なんじゃね?と気を使っていたためだ。
ノブヒコさんにそのこと話したら、「んなことねーよw」と笑われたけどね。
そして、ワイワイ2時間飲み放題終わった後、近場のカラオケ店にいくことになった。
俺の伝家の宝刀の出番となった。
大学時代は、仲間たちとつるんで良くカラオケいってたし、色々面白い振り付けのPV見て、マスターしていってたんだ。
こんときは、トラジ&ハイジのファンタステ○ポを完全マスターしていたため、同じルームになった、ミズキさん、マリちゃん、ノブヒコさん、カズエさんの前で、ついにそれを振り付けつきで披露した。
みんな爆笑。
業務時間中は、あんまり仕事以外のことは話さずにいたし、あんまり明るい奴じゃないと思われてたかもな。
でも仕事のプロならそうするよな?
(本当は、それ以外のコミュニケーションも大事で、できるならした方がいいんだけどね)
落差が受けたのかもしれない。
マリちゃんとミズキさんから、「どこで覚えたの?w」って話かけられてちょっと会話し出すきっかけになったかな。
作品名:偽電車男 第一部「栄光と地獄」① 作家名:ぎーくおぶじえんど