雨は彼女を許さない
ずっと雨は降り続けた。雨雲は私の町の上から消えなかった。
1週間ほど、梅雨でもないのに雨が続いた。
・・・その日が訪れた。
家の近くの川が、連日の豪雨に耐え切れずに氾濫した。
私の家も、学校も、町が水に浸かった。
両親は、怯える私を強く抱きしめてくれた。
その時
一際大きな水の流れが、私の家の近くに押し寄せた。
1メートルほど水に浸かっていた家に
その倍はあろうかという水の塊がぶつかった。
最初に扉が破れた。次に壁が崩れた。
そこからは一瞬で、瓦礫と濁流に揉まれた。
「どうして雨が止まないの!どうして川が溢れるの!」
そう叫んだ。そこから先は覚えていない。
雨が止み、水が引き、私は泥にまみれて発見された。
その時、私は母さんの腕に包まれていたという。
その母さんの背中には、折れた木の柵が突き刺さっていた。
私を抱きしめたまま放さず、死んでしまった。
私を守って、死んでしまった。
父さんはその時には発見されず、後日遺体で見つかった。
私は嘆いた。両親を亡くしてしまった。
「雨が降ってほしい」なんて私が願ったばかりに。
そう、思った。
そしてそれは、本当の事であった。
その時から私は、雨を操る力を持ってしまった。
まるで天は私を嘲笑うように
両親をうばった雨を
その雨を操る力を授けた
授けたなんてものじゃない。
これは呪いなんだ。
私は、雨に呪われているんだ。