雨は彼女を許さない
「ただいまー」
と言うと共にかばんをそこらに放り、リビングの扇風機の正面に陣取る。
「ちょっと、まさ兄!どいてよ!あたしだって暑いんだから!」
おかえりも言わずに、むっとした顔で俺を睨む彼女は俺の愛する妹だ。かわいい。中学生2年生のアホ。名前は由美。かわいい。
「るせーよ、お前は先に帰って涼んでんだろーが。あ、冷蔵庫からアイス取ってくれ」
ふん、どいてたまるか。扇風機は俺のもんだ。
「あれ、アイスなんてあったっけ?」
と言う由美の手にはアタリと記されたアイスの棒。
「おま、食ってんじゃねーか!あー楽しみにしてたのに!お、当たってんじゃん、店行って交換してこいよー」
「やだよ、アタリ引いたのはあたしなんだから、これは貰って当然でしょ?て言うかこの暑いのに、兄ちゃんのために外に出たくないよーだ」
そもそもそのアイスは俺のものだ。といちいち言い返すのも面倒なので大きなため息をついておいた。まったく、かわいいなぁ。