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イグアナは方舟に乗って

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第一章 いつもの朝




俺ははいつからここにいるんだろう。
でもなにも変わらない。

俺がこの生活になってから
どのくらいの時間が過ぎたのだろう。

毎朝?
朝というか目覚ましに起こされる
決まった時間に。

「おはよう」と
その無機質な声をかけてくれる。
いつもの生活が始まる。


俺は眠い目をこすって
重たい足取りでラボにいく。

ここは地球からどのくらい
離れているのかな。
ふと思ったが
実はもうそんなことに興味はない。
考えるだけ無駄である。


ただひたすら目的のあの星に向かって
飛び続けているこの無駄にでかい箱の中での
生活を日々なんとなく過ごしている



ラボに入るとシンプルな白い机がある。

机に座りいくつかのスイッチを押して
人工自然環境装置<オアシス>に
異常がないかチェックしていく。
温度、湿度などなど。


大きなガラスの向こう側に
広がっている世界<オアシス>は
豊かな自然がいきいきとしていて
今日も元気そうだ。

このオアシスは地球と同じ環境が
全て整っているのだが、
明らかに違うことが一つある。
すべてのものが小さい。
あの美味しそうなリンゴも
俺にしてみれば豆粒よりも小さい…
一度オアシスに頼んで装置の外に
一つ出してもらって食べてみたが
確かにリンゴの味はするものの
あまりに小さいので虚しくなった。


机のコンピューターが
「おはよう、けーた」
と言ってくれる。
俺の唯一のしゃべり相手だ。
名前はなんだか訳の分からない英語で
長ったらしい書いてある。
呼ぶのにめんどくさいという理由で
<アーク>と勝手に名前をつけた。
彼も気に入っているみたいだ。


部屋にあるいくつかある紅茶の中から
その日の気分で選ぶ。
今日はアールグレイにしよう。
紅茶を飲みながら一服。
眠気をゆっくりと
紅茶の香りと煙草の煙で
溶かしていく。


毎朝の習慣になっている一連の流れだ。
いつからやっているのか
思い出せないけど
なにも考えなくても
体は勝手に動いてこなしていく
今日も1日が始まった。