雨の日は きみを想う
【手術前夜】
「雨って言うのは、神様の涙なんだよ」
降り続く雨の中、彼はそう言って空を見上げた。
白い寝衣が貼り付いて身体の線がわかる。こんなに細かっただろうか。
「こうしているとね、僕の中も悲しみでいっぱいになるんだ」
神様の悲しみが?
そう問うと、彼はわずかに微笑んだ。
他人の分まで受け止めることはない。
ひとの身体は一人分しか容量がないのだから。
「大丈夫、僕は空っぽだから。それに、」
ほら、と空を指差す。
「僕が受け止めた分だけ神様は元気になれる」
喜びも幸せも、もうきみの中には無いのですか?
「……半分寄こせ」
彼の腕をつかんで引き寄せた。
きみを犠牲にする神なら、そんなものはいらない。
どうか。
明日もきみに会えますように。
作品名:雨の日は きみを想う 作家名:なっつ