雨の日は きみを想う
【紅い傘】
黒い傘の群れが校門に吸い込まれていく。
傘の花が咲く、なんて言うけれど、それならさしずめ葬式用だろう。
男子校なんだから仕方がない。
その中でたったひとつ、紅い花を見つけた。
「男が紅い傘とか無いわー」
「何言ってんだよ。そうじゃなくても暗いのに、黒い傘なんかさしたら気が滅入る」
そう断言されてしまうと、自分の傘の中のなんと暗いことか。
彼が傘を差しかけた。黒い花から紅い花へ、身をかがめて覗き込む。
そこから見る世界は実に鮮やかだ。街も木も、同じ景色ではない程に。
「断然いいだろ?」
得意げに笑う。
「黄色もおすすめだよ」
「小学生かよ」
彼の頬が紅いのは、きっと傘のせいだろう。
僕の頬が同じ色に見えたとしても、きっと。
作品名:雨の日は きみを想う 作家名:なっつ