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ワタリドリ
ワタリドリ
novelistID. 54908
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まい子は、お母さん子 「もしも!」

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もしも僕が話せたら、君に幸せな言葉を送りたい。
もしも僕が歩けたら、いつでもどこでも駆けつけて君をやさしくつつみ込んであげられるのに
もしも僕に心があれば、君にすべてをささげたい。
もしも君に出会えなかったら、僕はきっと死んでいたね。

でも、ようやく気づいたんだ。僕はとうの前から死んでいたって事に・・・。
おしい事しちゃったよ。見なければよかったって思ったよ・・。
君といられる時間が少しでも長くのばせられるのなら
窓にうつった僕の姿、しおれきったアサガオの僕
君はこんな僕でもいつもやさしく笑って水を注いでくれた

しおれている事も知らないで、いや・・・君は知っていたんだね。
たとえ花が枯れてしまっても僕の心は生きているって事を・・・。

君を見るたびに僕は、希望とゆう花びらを心にいくつも咲かせてこれたんだ。
僕にとって君はすべてだった。

コツン コツン
君の足音が近づいてくる。
ガチャ

とびらが開くのと同時に僕の意識はしだいにゆっくりと遠のいてゆくのを感じた。
見慣れた部屋の風景がどんどん遠く離れてゆく・・・。
不思議と怖さは感じなかった

もしも僕がアサガオに生まれて来なかったら、こんなにも君を愛する事が出来ただろうか。
アサガオは近づいてくる足音にゆっくりと語りかけた。

「ありがとう。」

この言葉を最後に口で伝えられなくてごめんなさい。

「流れ星にお祈りをしよう。」

アサガオは心の眼を閉じると、意識の向こうにかがやく、ひろいひろいひかりの世界へと旅立っていった。

「だあ、だあ。」

小さなじょうろを片手に窓辺に近づいてきたまい子がやさしくほほえむと、しおれたアサガオのはなびらをそっと指先でなでおろした。

瞬間、夜空を一通の流れ星が走り去ってゆくのを、まい子はまぶたを閉じるように、心の眼でそっと見つめた。やさしく包み込むように、宇宙の果てに永遠に咲き誇るアサガオの花びらを・・・。