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はじまりの旅

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 クグレックは瘴気の影響を受け、体調が優れなかった。杖を突きながら歩いていたので、杖の存在が物理的にこれほど心強く思えたことはない。そして頭の中ではティアが何故薬をくれなかったのかということをずっと気にしていた。ティアはサバサバした人間なので、好き嫌いがはっきりとしている。クグレックとディレィッシュのことは体力がない人間だからあまり好きではないのかもしれない、とクグレックは考え、悲しい気持ちに陥っていた。
「クグレック、大丈夫か?」
 ニタよりも落ち着きがあるという理由から殿を務めるハッシュがクグレックに声をかける。
 クグレックは杖を突きながら、「うん。」と頷いた。
 しかし、本当は全然大丈夫じゃない。ドキドキ動悸はするし、頭も痛いし、気持ち悪い。しかも、瘴気はどんどん濃度を増していくので、症状は徐々に酷くなる。
 と、その時だった。先頭を進むティアが大きな声で叫んだ。
「魔物よ!」
 その声に応じて、ハッシュは真剣な表情に変わる。ロープを辿って、前方を行くニタとティアに合流した。少し遅れて、クグレックとディレィッシュも3人の後ろに合流した。
 3人の背に守られながら、クグレックが見た魔物の姿は真っ黒な姿をした大きな蜘蛛の様な多くの節足を持った生き物だった。黒色をした個体なのかと思いきや、よく見れば縁のあたりは靄がかっている。黒い靄の集合体であるようだ。
 クグレックは魔物を前にして背筋がゾクゾクとした。それは恐怖が大半を占めていたが、どこかに期待があった。瘴気による具合の悪さはどこかに行ってしまうようだった。
 クグレックは杖を握りしめ、目の前のティア達同様臨戦態勢を取る。
「ニタ、魔物と戦うのは初めて?」
「多分。」
「あいつ、もやもやしてるけど、殴れるから。」
「おう!」
「ハッシュは余裕だよね。」
「あぁ。」
「じゃ、行くよ!」
 3人は魔物に向かって駆け出し、魔物に攻撃を加えた。ニタの力強い拳、ハッシュの強烈な蹴り、ティアの音速の拳が蜘蛛型の魔物を襲う。強力な攻撃を受けた魔物は状態を維持することが出来ずに霞の様にかき消えた。もうそこには何の跡形も残っていなかった。
「ヘーイ!」
 ティアはニタとハイタッチをかわす。
「余裕だね!」
 と、ニタは魔物のあっけなさに満面の笑みを浮かべた。

作品名:はじまりの旅 作家名:藍澤 昴