はじまりの旅
様々な色が世界を成している。クグレックは世界に対してそのような気付きを得た。
ただ、一つだけ分かっていないことがあった。
それは自分自身のことだった。クグレックは自分自身のことをほとんど知らない。
クグレック・シュタイン。O型。3/21生まれ。身長165cm。体重49kg。足の大きさ24.0cm。マルトの村で母方の祖母と共に過ごしてきた。瞳の色は黒に近いヘーゼルブラウン。髪型はおかっぱで真っ黒。祖母は魔女で薬づくりを得意とする。祖母が魔法を使ったことはあまり見たことがない。両親は生まれてすぐになくなったため両親のことは知らない。
火事に巻き込まれて、死ななかったこと。
魔女のこと。
ピアノ商会でのバチバチ(ニタ曰く)のこと。
そういえば、メイトーの森で出会った紅髪の女からは、祖母を殺したのはクグレックであり、クグレックはその内に秘めたる魔力で災厄をもたらすとも言われていたことを思い出した。その時は女の言葉の意味が分からず、聞き流してしまったが、クグレックは今でもひっかかりを持っていた。
疑問が沢山湧いて来て、溢れ出る不安の海におぼれそうな心地だ。
クグレックは心の中で祖母に助けを求めた。
――おばあちゃん、私の存在は一体何なの?教えて。おばあちゃん。私は、何もわからないよ…。
祖母がいてくれれば、このような不安に陥っても、その暖かな優しさでクグレックを包み、安心させてくれるのに、とクグレックは急に祖母が恋しくなった。常に身に付けている祖母の形見の黒瑪瑙のネックレスを触れてみるが、何かが起こるわけではない。
祖母はクグレックの目の前で静かに息を引き取り、死んだのだ。