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はじまりの旅

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序章





 私のおばあちゃんが亡くなった。
 私の大好きな大好きなおばあちゃん。
 お母さんとお父さんは私が物心つかないうちにいなくなった。生きてるかどうかは分からない。
 だから、私にとって家族と言える存在はおばあちゃんしかいなかった。
 
 おばあちゃんは亡くなったら焼いてもいないのに灰になった。
 それはおばあちゃんは魔女だから。
 ベッドに残ったおばあちゃんの灰は、一粒残さずかき集めて小瓶に入れた。そして、カップ一杯の湧き水に大匙1ほど溶かして、一気に飲み干した。おばあちゃんと同じく魔女の血を受け継ぐ私は、魔女の死を看取った者として、おばあちゃんの力を継承した。これはおばあちゃんが昔から言っていたことだった。

――おばあちゃんが死んだら、ククはおばあちゃんの灰を一粒残さずかき集めて、そのうち大匙1杯を湧き水に溶かして飲むんだよ。そうすればおばあちゃんは救われて、いつでもククのことを見守っていられるからね。たのんだよ。

 とおばあちゃんはよく言っていた。「私の大好きな可愛いクク」の次の次の次くらいに頻繁に言っていた。
 おばあちゃんの唯一のお願いだったから、私はそれを叶えた。おばあちゃん、救われたのかな。
 残りの灰はどうすべきか分からない。もうあまりにも悲しくて辛いから、宝物にすることにする。

 おばあちゃんがいないと私は生きていけない。
 どうしたらいいのかな。
 おばあちゃん、私もおばあちゃんのところに行きたいよ。

 どうしたら死ねるかな。
 

作品名:はじまりの旅 作家名:藍澤 昴