ゴキブリ勇者・ピエロ編
私の仕事はお客様と笑顔で話すこと。
希望をできるだけ叶えること。
ピエロとして楽しく振る舞うこと。
それはそれで、楽しくないわけではなかった。
しかし、母のおかげで用意されていたレールに乗って、私はどこに行くのだろう。
この先になにがあるのか、私は知ろうとしていなかった。
私は母を信じていた。
それはクラウン商会を信じていたことと同じなのだ。
そう簡単に疑うようなことはできなかった。
それに私は今の生活に満足してしまっている。
クラショーが選んだ私の妻もいい人で、何一つ不自由はない。
あの母の言葉さえ思い出さなければ、問題など無いように思えた。
しかし、私は決断を迫られることになる。妻が妊娠したと、笑顔で報告してきたのだ。
輝くような笑顔だった。
私はこの笑顔をどう守るべきか、毎日頭を悩ませることになった。
作品名:ゴキブリ勇者・ピエロ編 作家名:オータ