ゴキブリ勇者・ピエロ編
息子が六才の誕生日を迎えたとき、俺は一応父親になっていた。
ケーキに立てられたロウソクが、暖かい光を放っている。
ロウソクの炎が吹き消されたのと同時に、俺はプレゼントを手渡した。
「おめでとう、タツヤ」
タツヤは嬉しそうに包みを開けている。
それを眺める妻の眼差しからも、影は消えていた。
「ありがとう、お父さん。
あのね、僕もお父さんにプレゼントがあるんだよ」
「え、なんで?」
「お母さんに描いていいって聞いたら、いいって言ったから」
俺はゆるく巻かれた筒を手渡され、くるくると広げた。
内側には俺の絵が描いてあった。
「あのね、本当はお父さんの誕生日が良かったんだけど、早く渡したかったんだけど、ケーキを食べる日の方がいいと思ったんだけど、えーっとね」
幼い声で話す息子を俺は力一杯抱き締めた。
俺が泣いていることに気がついて、妻も俺と息子に抱きついた。
息子は苦しいと、困った顔をした。
だけど、俺はどうしようもないほど幸せだった。
ー終わりー
作品名:ゴキブリ勇者・ピエロ編 作家名:オータ