第1章 章末話 『サクラ咲く キミの待つ場所』
ティエルは視線を受けると黙って頷く。
彼らとの接触は待ち合わせ時刻と同時にミッション開始を示すのだった。
そこで3人分のIDカードを渡される。
ここからが正真正銘の本番だ。ミスは許されない。
隠し通路を歩きながら、先ほどまで緊張感のない態度から一転し、ティエルとロメルは鋭い眼光で意気込んでいた。
「なんだ??子犬ちゃんがやけに張り切ってじゃないの??」
「子犬は余計だ。だけど、俺には目的があるからな。だからテメェみたいな嫌なヤツに指揮下に入ってまで今回のミッションに参加したんだ」
「ふん、いい目だ。ま、精々頑張るんだな。だが、ミッション最優先だ。『アレ』の奪還は事が済んでからにしろよ」
「…そろそろいい??…2人とも時間」
いつの間にかそこは行き止まり。
あるのは城内へと続く扉があるだけだ。
時計はミッション開始時刻を示していた。
「――行くか」
俺たちはミッション遂行のためだけの『破壊神』になる。
眼光が鋭く紅く変化し、スイッチが入り、それぞれ武器を出現させる。
「ラディ、城内の術者割り出せるか??」
「…やってる。…出たよ、術者は40人。…それ以外は問題外、余裕」
40か。この程度なら問題ない。
ティエルが目で合図し、ドアを吹き飛ばして一斉に城内へ突入する。
そこのフロアに居た者が何事かと視線が向く前に、ロメルの光弾の乱射をもろに食らい倒されていく。その上を飛び越え、ティエルが飢えた野獣のようにケタケタ笑い声をあげながら連絡を取ろうとしていた術者たちを一瞬で禍々しい剣で掻っ捌く。
断末魔をあげる間もなく喉を切り裂き、まるで楽しむかのように続々と倒していった。
「ヒャハハハッ!!!弱い弱い弱い弱い弱い弱い弱い弱い弱いッ!!!!!誰でもいい、この俺を楽しませてみろよおおおおおおぉおおおおッ!!!」
血しぶきを浴びながら、術者を切り刻んでいく。
それに魔法で抵抗する者もいたが、無残にも一瞬で貫かれてしまう。
「ヒャッハァ!!!次だ次だ次だ次だ次だッ!!!!」
叫び声をあげ、血を浴びたまさに悪魔のような恐ろしいその形相は恐怖を与えるに十分だった。ティエルたちは、別のフロアに移り、無残に散らし、また別のフロアに移っていく。
「ラディ、ここ任せたぜッ!!!俺はアレを取りにいくッ!!!」
そう言って、ロメルは光弾を乱射しながら走り去っていく。
「…らじゃあ」
女だからと油断して、襲い掛かる術者たち。
ラディは応戦する様子もなく、ただ無表情でじーっとそれを見ていた。
だが、その瞬間。
視界が暗転した。
それが、どれだけ愚かなことだったか身をもって知るほどに…。
何が起こったのか。次に目に見えたのは床だった。
同時に最後に見たモノは分断された自分の下半身だった。
切り離された上半身と下半身から大量の血しぶきがあがり、ラディのその白い肌を染めていく。隣のフロアでは、ティエルが楽しむかのように、子供が玩具か何かを欲するかのようにある意味純粋な声を上げて飛び込んでいく。
斬りつけ、切り裂き、貫き、そこから身を翻して背後にいた者を蹴り上げ、串刺しにする。
「こんなんじゃ足りねぇんだよぉッ!!!!もっともっともっともっともっと俺を楽しませてくれなきゃなあああぁあああッ!?!?!?」
そのとき突然、轟音と凄まじい激しい揺れが彼らを襲った。
「――な、何だッ!?」
城内を走っていたロメルにもそれは襲い掛かっていた。
足をすくうような振動が襲い、たまらず足を止める。
「くそッ!!何だってんだよ、コレはッ!!!」
謎の超振動で城全体が揺れているようだ。
しかも、ロメルが城の地下、最下層まで下り、厳重に封印されていたある部屋に強行突破で打ち破り踏み込んだ瞬間にそれは起こったのだ。
突如、部屋全体に魔法陣が浮かび上がった。
おそらくこの部屋にかけられていた防衛術式が発動したのではないだろうか。
と、思った瞬間にこの振動は起きた。
だが、今はそんなことはロメルにとってはどうでもいいことだった。
振動が起ころうが、防衛術式で攻撃されようが、城が崩れようが関係ない。
なぜならば、目の前に目的のモノがあるのだから…。
「よーやく見つけたぜ。ククク、これで…」
そこに見えたのは――
<第2章に続く>
作品名:第1章 章末話 『サクラ咲く キミの待つ場所』 作家名:秋月かのん