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秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
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第1章   章末話   『サクラ咲く キミの待つ場所』

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ミナは小さな身体でミミルの小さな身体を抱きとめ、ミミルの頭を優しく撫でていた。何だか今日はミナの新たな一面満載だな。こんなミナ今までで初めて見たぞ。

でも待てよ。何て言うのかな、この既視感(デジャブ)のような感覚みたいなもんが俺に纏わり付く感じは…。

この感じどっかで体験したような…うーん。…ダメだ、わかんねぇ。さっきまで何かここまで出掛かっていた気がするが、まぁきっと気のせいだな。


「どうした?何を独りでぶつぶつ言っているのだ。考えるのなら黙ってした方がいいと思うぞ。傍から見たら怪しいぞ」


考え込む俺の元にヒカリがじとっとした目でやってきた。
…って声に出してたのか。全然気づきもしなかったぜ。
すると、ヒカリはにやりと笑みを浮かべると、


「フフフ♪冗談だ。貴様が真剣な顔で何やら考え込んでたんで何だか面白くなかったのでな。だからちょっとからかってみただけさ♪フフフ…貴様をからかうと本気にするから本当に爽快感があるぞ」


「…おいおい」


肩をすくませる俺を見て、にやにやと小馬鹿にするような態度で笑みを浮かべる
ヒカリ。…このガキ、毎度毎度この俺を玩具にしやがって。

っていかんいかん、ここで
また反応すればこいつの思うツボだ。


「まぁそれはいいとして、何をそんなに真剣に考え込んでいるのだ?」


「ん?あぁ、何かこの感じどっかで体験したようなしてないようなって感じて さ。デジャブみたいなもんだな。それが何なんだろうって思ってな」


「何だ、そんなことか。そんなもん考えるまでもないだろう。いつもの貴様と泣き虫アミーナの構図じゃないか。そこまで考えが鈍いとは本当貴様の脳は貧弱だな」


「そうか!それだ!さっきまで感じていた妙な感覚。これでわかったぜ。よく気づいたな、ヒカリ。お前って頭いいんだな」


「…これはダメだな。馬鹿か貴様は。もっとしっかりしろよ、ハルトお兄ちゃん…フフフ」


意味深な笑みで笑うヒカリはほって置くとして、でも、あの二人からそのデジャブを感じるとはな。ってことはミナが泣き虫になったのはこのチビ猫の影響からなのか。

…うーん、どう考えてもそれしか思いつかん。これを見ればな。


「しかし、あのモノがここに来ているとなると私の…」


「ん?どうした、ヒカリ。今、何か言ったか?」


ちょこんと俺の身長の半分より小さいヒカリが俺の視線の下で何やら独り言を言っているような気がしたので、気になってヒカリに訊いてみた。


「いや、何でもない。こっちの話だ」


「そうかい」


その表情は何だか無言で俺にこれ以上聞いても何でもないから心配するなと言っているような気がした。

そう感じた俺は、視線をミナに戻した。


「でも、ミミル、どうしてこんなところに?スクールはどうしたんです?許可を取ってこちらに来たんですか?」


「…いいえ。無断でこちらに来ましたですの」


何だか複雑そうな表情でうつむくミミル。


「無断でって…あなた、あの森から無断で抜け出したりなんかしたらあなたは…」


「はいですの。それを覚悟してこちらにやってきたんですの」


きゅっと下唇を噛み、真っ直ぐな覚悟を持った真剣な表情でそう答える。


「覚悟って…何でそんなことを」


「ご主人様に危険が迫っているからですの」


「…危険が??」


ミミルの思わぬ言葉に驚くミナ。…危険って。また厄介かつ物騒な話だな。


「はいですの。ここでは詳しくはお話できませんですのでその話は改めてしますですの。でも、私はご主人様の危機を予期し、それを伝えるためにやってきたんですの」


「…私のためにそこまで無理をして。…本当にあなた、あのときと全然変わってないですね。その無鉄砲なところは」


そう言うとミナはさっきまで曇らせていた表情を緩ませた。


「そうですの?私にはよくわからないですの。でも、ご主人様がそう言うのでしたらそうですの」


ミミルもミナと同じように表情を柔らかくする。
しかし、ミナはまた真剣な表情でミミルを見据え、ゆっくりと口を開く。


「でも、森を無断に抜け出したことは本当に無茶でいけないことをミミルはしました。それは事実です」


「…にゃぅぅう」


途端にしゅんと俯くミミル。
…面白いなこいつ。


「…でも」


ミナはしゅんとうな垂れて俯いているミミルの頭を優しく撫でると、


「過ぎたことは何を言ってもどうやっても元には戻りませんし、それにどうにもなりません。あなたも森を抜け出しちゃったことですし、今から戻るわけにもいきませんものね。今、戻ればきっと二度と外には出られません。もしかすると厳しい処分も待っているかもしれません」


「う…うにゃぅ…」


ミナの言葉に想像したのか怯えるミミル。
…ホント面白いなこいつ。ミナの言った言葉にころころ表情が変わるところとか見てて飽きないぜ。


「あなたもどうせ行く当てなんかないでしょうし、仕方ないですね」


「…それでは!!」


「はい。仕方ないので私と一緒にいてもいいですよ。それに、私に危機が迫っていることを自分の危険を承知で私に知らせに来てくれたんですもの。さっきは怒りましたが、私は本当に嬉しかったです。私の身を案じて知らせに来てくれて」


「…ご主人様」


「本当にありがとう、ミミル」


ミナは優しげ向日葵笑顔をミミルに向け、頭をよしよしと優しく撫でていた。


「はいですの!!ありがとうですの、ご主人様!!このミミル、この身に代えましてもご主人様をお守りしますですの!!」


ミミルは力強くそう決意を新たにすると、ミナに抱きついた。
何だか信じられないな。ミナがこんなにしっかりと自分の意見を言って、このミミルという少女に慕われて、こんなに包容力があるなんてな。ミナってホントは意外に強いのかもしれない。

そうミナの姿を遠目で見ていて何だか微笑ましくなり、そろそろいいだろうと思い、俺はミナのところに歩みだす。


「話はついたみたいだな」


「あ、ヒナちゃん。はい、何とか」


「うぅ~!!」


俺の声に気づいたのかミミルは俺を見ると、泣きそうな顔になりミナの後ろにささっと身を隠す。


「どうしたの、ミミル?私の背中に隠れたりして?」


「だって、ご主人様、この方ってば私に意地悪なことするんですの!!さっきだってひどいこと言いますですの!!それに何だか怖いんですの!!誰ですの?!この意地悪な方は」


「意地悪で悪かったな。おチビさん」


そう言うとむぅっと頬を膨らませ、悔しいのかまた地団駄を踏んでいた。


「もう、ヒナちゃんったら。ミミル、前に話したことがあると思いますが、この人がヒナちゃんです」


「え?!この方が…ですの」


ミミルは予想外の言葉だったのかもの凄く驚いているようだった。
…なんだ、そのじとっとした目は?


「ご主人様、何かの間違えでは??」


「って何の間違えだよッ!!」


「…にゃぅう~。やっぱり怖いですの~」


ミナの服の裾をきゅっと握り締めるミミル。