D.o.A. ep.58~
Ep.67 あなたのために
どうして、という問いに対し、仕方がないんだ、という答え以外を得られたためしがない。
その後に、お前のためなんだ、と続く。
誰もが示し合わせたようにそれ以上の弁解を拒み、背を向ける。
鎖された箱庭は、安全で陰鬱で理不尽で、歳月を経るごとに眼前に醜悪さを露呈させていく。
脳髄を蕩かすような安寧に浸るために、誰もがお前のためなんだと紡ぎ、それが、お前のせいなんだ、と認識されるようになったのはいつ頃からだったか。
猫撫で声の甘い口舌は、真綿で頸を絞められるようだった。
気付けばかたく絡めとられ、どこへも行けず、諦観と容認の日々がむなしく過ぎゆく。
今は遠い、鈍色の思い出の話。
けれど、一つだけ鮮やかな色彩だけが、いまだ色褪せず、責めつづける。
硝子のような視線に気付ぬ装いを徹した、あの罪を。
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作品名:D.o.A. ep.58~ 作家名:har