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D.o.A. ep.58~

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トータスも、きな臭くなってきた。

戦争の準備を始めているらしい。
何処とおっぱじめるのかは、わからない、ということだった。
バスタードの去り際に放った言葉。
あれが、ある種の宣戦布告のようなものだったのだろう。
バスタードが属する勢力を相手どる、ということか。

戦う敵はわかっていても、具体的に何と戦うのかはわからない、というのが正確なのかもしれない。
敗北を喫するのは大抵、敵に対して無知の側だ。
敵兵の数がわからない。敵の装備がわからない。敵がいつ頃現れるのかわからない。。敵の正体がわからない。
上層部の連中は心得ているのか、どうか。
兵たちはほとんど何も知らされていない様子だった。
陸兵の方は可もなく不可もなくといった装備だが、海軍にはずいぶん金をかけている。
10年間かけて育て上げたというそれは、おそらく比肩するものはそうあるまい。
海から来る敵は海で防げ、などと言った軍人がいたそうだが、上陸する前に叩き沈めてしまえれば、それで事足りるというわけだ。
敵が本当に海からばかり来るとは限らない。そう都合よくいけばいいが、と思う。
同時に10年前から準備をしていたという事実に気付いた。

自分はロノアの民ではないし、参戦する義理もない。
それでも戦争には暗殺がつきものなので、お呼びがかかるかもしれない、と心積もりはしていた。
しかし、待てど一向に軍から仕事が来ることもなく、何を血迷ったか国の祭典を例年通りに行うという。
この国の君主は正気か。―――誰も止める者はいなかったのか?
そこまでの余裕があるくらい、勝利を確信しているのか?
懸念を露さえ抱かぬほど、ロノアの上層部も能天気ではあるまい。
まさか、敗戦がわかっていて、やけくそに最後の馬鹿騒ぎでもやるつもりなのか?
わけがわからなくなり、やがて理解したのは、自分にどうやら出番はないらしいことだった。
もとより、戦争になど巻き込まれたくはないし、留まる理由はない。
近々渡航制限がかかり、出国は容易でなくなるだろう。
つまり、離れるなら今のうちだ。

ただ、あの少年のことが、多少心残りではあった。
散り散りになったあと、どうやらエルフの青年と共に逃げおおせ、無事生き延びているらしい。
かといって、軍隊生活を営む彼の前にわざわざ出ていって襲いかかるのは、信条に大いに反する。

ゆえに、賭けてみることにしたのだ。

戦争に生き残り、再びまたどこかで、出会うことができたとしたら。
それこそが、もはや断つことのできない縁だ。
―――もしもめぐり会えたなら、今度こそ。







作品名:D.o.A. ep.58~ 作家名:har