Lost Universe 01
向こう――つまり応援席で見て来いと青戸が遠ざかり始めたとき、背後から真夏の声が聞こえる。
「……えと、頑張ってください!応援してます!」
本当はもっと言いたいことがあるはずだがこんな言葉しか出て来ない。
真夏にとって青戸はサッカーを観るようになったきっかけで、プレーヤーとしても目標とする選手……彼と話すことが出来るなんて夢のようだ。
しかも、これからはまた彼のプレーが見れるなんて――瞳を輝かせて青戸の背中を見送る真夏を他所に、青戸の表情はどこか冷めた目をしていた。
それは遠い昔を思い出した懐かしさからか。
それは遠い昔に覚えた虚しさからか。
自分のことが好きだったと言ってくれた少女がいた、それでも過去の栄光に縋りたくて国境を越えたわけではない。
(俺はスナイパーズの青戸じゃない、スカーレッツの青戸だ――)
昔の自分に信念があったように、今の自分にも同じような想いがある……今の青戸はまだスタート地点に立ったばかりだった。
作品名:Lost Universe 01 作家名:ねるねるねるね