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佐和島ゆら
佐和島ゆら
novelistID. 55680
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亡霊居酒屋の一夜〜やおよろず〜

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「ありがとう。話を聞いてくれて。心が、楽になりました」
 客は立ち上がる。黒いしみはすっかりなくなっていた。客は何度もお辞儀をした。そしてやせた肩をよたよたと揺らしながら店を出て、夜へと消えていった。
 翔太はふと、店の名前の由来を思い出した。
「どんな客でも受け入れる店」でありたいという店主の意志がこもった名前。
 翔太はぽつりと言った。
「やおよろず。たくさんの客を受け入れたらいいですね」
「そうだな……」店主は短く答えた。
 翔太は客が開けたままの戸を閉めようと、手をかけた。ふと視界に白いものが入る。
 雪が降り出していた。