「夕美」 第九話
「おばさま、隆一郎さんが私に言ってもらえたことは身に余る光栄だと思っています。正直私みたいなものがふさわしいとは思えません。先ほど俊之おじさんのことをふさわしくないと言われたのと同じだと思えるんです」
「そう、やっぱりあなたに結婚の申し込みをしたのよね？」
「はい、そう受け取りました」
「あなたはふさわしいわよ。隆一郎のほうこそあなたには勿体ないと思えるぐらいよ」
「おばさま、それはありえないお話です」
「そう？躾も立派だし、年の割に考え方がしっかりとしているしね。何といっても可愛いし、健康でスタイルもいいから、外に出たらきっともてはやされる女性よ。こんな年のおばさんに言われても嬉しくないだろうけど、人を見る目だけは、それに女の勘だけは鋭いの。本当よ」
「とてもうれしいです。生まれて人を好きになったこともないし、交際した男性もいません。男の人と言えば弟か義父ぐらいしか親しく話したこともないんです。隆一郎さんのこと、好きになれても自分が満足なことをしてあげられるか自信がないんです」
「女はね、好きになったら信じられる人についてゆけばいいの。それができるということが女の幸せになるのよ。隆一郎があなたのこと大切にするのなら、身を任せてあげて欲しいの。母親として息子の行動には責任を持つから安心して。悲しい思いはさせないから」