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ゆめ

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花びらが散ったあとの桜が…… そんなフレーズをふと思い出した。
キミと出かけた桜花が舞う公園への散歩はとても楽しかった。
あれから 空のご機嫌が変わってばかりだ。めそめそしたり、どんより沈み込んだり、ちょっと待ってよと言いたくなるほど 陽射しが暑く晴れたり。キミも負けそうなくらい気まぐれな様子だ。

朝から青い空をみせている。仕事場の窓を少し開けて 部屋に乾いた空気を入れてみた。
天気予報で知った気温よりも 窓越しに部屋で感じる温度は、ややひんやりとしていた。
机に向かい、新規の依頼に新しい言葉を見つけるボクが居る。

普段ボクは、窓から外を眺めることはあっても、あまり窓は開けない。そう…以前 急に吹きこんだ風が キミと選んだ奇怪な模様のカーテンが大きく翻し ついでに机の上の原稿用紙まで床にばらまいてしまったことがあった。それにたまに騒音に感じる音が迷い込んでくる。怒るよりも防ぐほうが 気持ちが楽な気がした。
たぶん いつだったかキミが言っていたことだったよね。「にゃん」ってさ。

この頃、キミとの約束がなかなかできない。いや、今までも会う約束をしたことは ほとんどない。気が付けば、キミがボクの背中の後ろに居てくれたから、ボクはいつも心地よい空気に包まれていた。でも、卒業してからは、キミも仕事をしている。逢いたい気持ちは ボクと同じくらい持っていてくれるのだろうか。ボクのその気持ちは、どれくらいなのだろうか。

それにしても 今日は体が軽い。ふわぁっと温かさを感じ、さらさらっと風が頬を擦り抜けるように感じる。あれ? 目を開けているのに 書いてたはずの文字が見えない。風に飛ばされてしまったのかな? まさかね……
床に目を向けると、おや?……
書いた文字が 散らばっている。 
なぁんだ。落っこちちゃったんだ。拾わなくっちゃ。 
慌ててバラバラにならないように 原稿用紙で掬うように静かにゆっくりと 慎重に拾い集めた。もう少しだ、と雑に急いで掬ったとき 原稿用紙の端からひと文字ちぎれ落ちそうになって 慌てたけれど 無事すべての文字を原稿用紙に戻すことができた。
もう窓を締めないと また飛んでしまうかもしれない。
窓を閉めようと手を伸ばすと、窓の横に寄せられたカーテンは あの奇怪な模様のカーテンだった。
たぶん ボクの知らない間に キミが掛け替えたのかな。うん きっとそうだ。それに問題はない。

作品名:ゆめ 作家名:甜茶