サーキュレイト〜二人の空気の中で〜第二十七話
「うん、オレはオレ自身で、そう決めたよ。だから、まどかちゃん自身が選んだ答えを聞かせて欲しい」
オレが訊いたのはそんな言葉。
普段ならこんなこと訊けもしなかっただろうけど。
これは、選んだ選択肢を大切にしていくための、誓い、だったんだと思う。
「信じてもらえないかもしれないけど……出会った時から、わたしは雄太さんのことが好きだったの。だから、わたしは。雄太さんとともに、ゆくことを……選びます」
厳かに、でもはっきりと、まどかちゃんは言う。
「もちろん、信じるさ。だってそれは、オレも同じだから」
肩越しに伝わる言葉を、オレはそのまま返して。
「うれしいよ。わたし、雄太さんに、ずっと好きでいてもらえるように、頑張るね」
「ああ、オレもさ」
耳よりも、心臓に近いその言葉は、オレの中へとしっかり根を下ろす。
「だから……だからね? 今日くらいは悔やんでもいいよね?これからを大切にするから。今日だけは、泣いても……いいよね?」
それはきっと、まどかちゃんの最初のわがまま。
オレは、その言葉に黙って頷く。
そしてオレたちは。
もう戻らない、大切な人達を想って。
涙が枯れ果てるまで……二人で泣いた。
二人の空気の中で、二人の涙が満ちていく。
観覧車の窓には、そんなオレたちにもらい泣きした神様の泣いた雫がこぼれ出し。
誰に知られることなく、包み守られていて……。
イルミネーションと、闇夜にたゆたう空の星の光に反射して、心を震わす幻想を創っている。
その幻想は、決して破られることはなく。
二人はそんな世界の中心で。
ゆっくりと、溶けていった……。
(エピローグへつづく)
作品名:サーキュレイト〜二人の空気の中で〜第二十七話 作家名:御幣川幣