Ungebetenen Gast 招かれざる客
「ええー!? ご婦人トリコルヌ行くんすか!? ホントですか!?」
「本当よー! 可愛いおちびちゃん達にいーっぱいお勉強させてあげるんですもの!!」
「ホントですかー!! いやーすげえ!! お若いですねもー!!!!」
素朴な酒瓶が何本も転がる、アルコール臭いダイニング。 ここは酒場ではない。
意気投合しすっかり出来あがったアルノー夫人とホルガーは
シードルを数本はひっかけ大いに盛り上がっていた。
厳密には、彼らが飲み干した酒はアップフェルヴァインなる
アベントロート近郊独特のリンゴ酒であるのだが、
大粒な泡とリンゴの香りにコテンパンにやられたホルガーには最早
区別の間違いはおろか、仕事の事もどうでもよくなっていた。
彼はリンゴ狂いであった。
「うちの息子はお勉強出来なかったもんで、もー大変だったのよー!!
だーかーらー、おちびちゃん達が苦労しないで済むよーに、
いーっぱいお勉強させて、いーっぱーい頭が良い子になって貰うのよー!」
「かっけー!!! かっけーですよごふじーん!!!!」
アップルパイを肴に、中年の婦人と小柄な青年は
木彫りのジョッキを軽くぶつけ合った。
明日は今日より楽しい事が待っている。
そう信じて疑わずに。
作品名:Ungebetenen Gast 招かれざる客 作家名:靴ベラジカ