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近代日本愉快伝~駅長吸血鬼

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近代日本愉快伝
赤ずきん/赤月シオン
ドラキュラ/浦戸零
勝倉さん


赤月 何でこんなところにいるんだろう。私。
浦戸 良いかい、赤ずきんや。あんたの祖母は後もう少しで殺されるところだっ
た。狼にな。
赤月 おばあちゃん。狼に殺されるところだったの?
浦戸 そうだ。だが、最近の狼は、一匹じゃねぇんだ。群れで生活をしておる。だから怖いんだよ。時に人間に姿を変えては、人を襲い殺すこともある。
赤月 浦戸さん。よく知ってるね。でも、どうして現場にいたの?何で狼の気配が分かったの?
浦戸 それはだなぁ。俺が狩人だからだよ。俺は、吸血鬼だ。野で鹿を見たら迷わず牙を刺して血液を頂く。肉は、人間に売り渡す。
赤月 狩人の勘って凄いんだね。私、浦戸さんの弟子になろうかな。
浦戸 やめておけ俺の興奮が止まらないだろ。あまりの可愛さに全てを吸い尽くしたくなるよ。あぁ、赤月さんに恋しちゃったかも。
赤月 相思相愛ですね。浦戸さん結婚しましょうよ。
浦戸 ちょっと待て!オレは、狩人という収入が不安定な職業だぞ。それに少し待っていてくれないか?心の整理がつかないからさ。
赤月 もしかして、浦戸さんって奥手なの?
浦戸 ば、馬鹿言うなよ。そんなわけないだろ。こんなにカッコイイ俺様が、モテないはずなんてねぇだろ。
赤月 自分で言っちゃう辺り怪しい…
浦戸 とにかく、こんな美人を相手にするのは初めてなんだ。あぁもう緊張してダメだ。顔が青くなりそうだ。
赤月 緊張したら顔が赤くなるんじゃないの?
浦戸 そうかもしれないけどさ。俺は青くなるんだ。ここは気にするところじゃない。
赤月 へぇ。変な人だね。浦戸さん。そろそろ吸血に行かないの?
浦戸 いかねぇよ。一週間に一回でいいんだ。毎日吸うと、有り難みがなくなるからな。
赤月 ふうん。禁欲的だね。
浦戸 だろ?俺は、元々人間だから吸わなくても人間の食事で満足できるからな。
赤月 じゃあ何で血を吸ってるの?
浦戸 うーんと。それはだなぁ。あれだよ。あれあれ。
赤月 あれじゃわかんないよ。
浦戸 タバコみたいなもんだよ。うん。本当は、タバコなんて吸わなくても人間は生きていけるだろう?それと同じだよ。
赤月 タバコが血と同じなの?色と形が違うのにどうして?
浦戸 やれやれ。赤月ちゃんは天然だな。 
赤月 何か言った?
浦戸 ううん。何も言っていないよ。ただ、赤月ちゃんが天然だなぁと思って。
赤月 天然ってどういうこと?天然記念物?
浦戸 まぁ、そういったところだな。
赤月 やったー。私レアなんだー。
浦戸 最近の血液は美味く無くなってきた。政治家は何をやっているんだ。俺の味覚がイカれてきたのか。それとも悪い政治のせいで人々が困窮しているのか。
赤月 浦戸さん。大丈夫?血液が美味しく無くなったって。
浦戸 俺の事は心配いらねぇ。それより、城下はどうなってるんだろうな。
赤月 確か、鹿島軌道が廃止になりましたね。
浦戸 こういうところは頭が良いんだからな。ありがとう。赤月ちゃん。休憩は終わりだ。さて仕事を始めようか。
赤月 はい。分かりました。って仕事って何ですか?
浦戸 バカヤロウ!決まってんだろ。そんなの。 
赤月 あの、分かりません。しかも私、女ですよ。それなのに野郎って…
浦戸 ごめんごめん。俺も言いすぎた。何しろ百万年に一度の復活を遂げたからな。
赤月 いや、百万年って我々生まれていませんよ。
浦戸 赤月ちゃん。たまに頭良くなるんだよなぁ。んで、赤月ちゃん何の話してたんだっけ?
赤月 何の仕事するのかって言う話です。
浦戸 おぉそうだった。(咳ばらい)さて、では、浦戸一家本日の任務を発表するとしよう。まずは、鹿島軌道を奪取する。そして、運行を再開させる。
赤月 分かりました。早速取り掛かりましょう。 
浦戸 まずは、そこまで行かねばなるまい。行くぞ。赤ずきん。
赤月 はい。ドラキュラ様。
舞台を歩き回る。
浦戸 ここまで何キロ歩いたか分からんけど、人っ子一人も居ねぇじゃねぇかよ。
赤月 皆、脅えているんじゃないんですか?ドラキュラが来たーって。
浦戸 俺、本物のドラキュラじゃないからな。レイ・アルバート・アントニオ・ドラキュラ・ヴラドが本名だからな。人間を串刺しにしたりそんな悪いことはしていないからな。
赤月 そうなんですか。ドラキュラ様。てっきり貴方が、政府を恐れおののかす御仁だと思ったのですがね。
浦戸 俺は、そこまで対したもんじゃねぇよ。つか、茨城、過疎化しすぎなんじゃねぇのか?
赤月 そうですね。あれ?
浦戸 どうかしたのか?
赤月 すみません。ここ、平成でした。
浦戸 平成?いやぁ、何で80年も誤差があったんだろう。
赤月 先輩。本当に申し訳ありません。私は、勘違いしたんです。
浦戸 じゃあ、よし鹿島軌道の跡を探して、そこに駅を立てよう。
赤月 ドラキュラ様。良いんですか。こんな手違いで。
浦戸 人間には失敗は付きもんだ。心配いらねぇ。それにしても80年もすれば線路もなくなっているし。何処に駅があったのかも分からなくなってるな。
赤月 ドラキュラ様。あれじゃないですか?
浦戸 どう見てもバスの停留所だが、はっ!間違いない。あそこだ。赤ずきん。よくやった!
赤月 ありがとうございます。では、向かいましょう。
浦戸 さてと。ようやく着いたな。茨城県民は良いよなぁ。危機意識があまりないからさ。簡単に血を吸うことができるからな。
赤月 そうなんですか?
浦戸 小学生の学力が関東では比較的良いんだが、中学生は北関東でビリだとか。それも何年も続いているのが証拠だろ?
赤月 そうですね。でも、だからこそ、茨城県民は優しいんだと思います。
浦戸 あの独特な訛り方と、優しさ。それでこそ、茨城県をのどかだと思わせるのだ。茨城弁は、下町言葉と呼ばれたりする江戸弁の次に有名な訛りだ。江戸弁は消滅しかかっているから、実質、茨城弁が関東方言の王様だ。
赤月 あの誰か来ましたよ?おーい。そこのお兄さん?お姉さん?
勝倉 私ですか?
浦戸 電車乗って行きませんか?
勝倉 い、いきなり何ですか。ここのバスは運行中止になりましたよ。
浦戸 誰もバスの話なんてしちゃいねぇよ。
勝倉 一体何なんですか。見知らぬ人にここまで強く当たるなんて。
浦戸 お前が話聞かねぇのが悪いんだろ。
勝倉 で、一体僕に何の用があるんですか。
赤月 電車に乗って行きませんかということです。
勝倉 電車ですか?ここ線路も何も有りませんよ。大体、どうやって電車をここまで来させようとするんですか。
浦戸 お前は分かっちゃいねぇな。良いか。お前が疑えば疑うほど電車は来ないぜ。逆に此処を駅だと思って電車を待っていれば絶対来る。
勝倉 ていうか、電車って何ですか?どう見ても本物じゃ有りませんよね。
赤月 最近の人は嫌だねぇ。すぐ、本物だ、本物だって。本物至上主義でね。時計なんか、GSHOCKなんて素晴らしいものを持っていて、それでいて香水はシャネルしか使わないって。我慢することを知らないんだから。
浦戸 まぁ、この辺で止めとけ。この男が泣いちまう。俺も酷いこと言いすぎた。御免よ。
勝倉 まぁ、良いですけど。本当に来るんですか?