33粒のやまぶどう (短編物語集)
ラキアーがこんな辞令を受け、泣く泣く赴任してから早3年の歳月が流れた。
チキュー上のニッポンという小さな島に着任し、それと同時に名前をひっくり返し、アキラと名乗った。そして意外にも、赤や黄の火花が飛び散る島国で、今は割に機嫌良く暮らしている。
なぜなら、すぐに可愛いチキューのメスと仲良くなり……、どうもこのような特別なメスのことをコイビトと呼ぶそうだが、それができたとか。
元々は、なぜチキュー生物は論理的な思考や行動ができないのか、その解明をすることがラキアーの使命だった。だが今は、いわゆるチキュー用語で――メロメロ――状態に。
こんな異常事態になっているラキアーのことをキャプテンは知らない。
しかし、ラキアーの任期は満了した。
そこでキャプテンは、夜空に火花が弾き飛ぶ頃に、ラキアーをピックアップするためUFOに乗って出掛けてきた。
ここでまずは上司として、部下がチキューでどう暮らしているかが気に掛かる。早速、こそっとラキアーの行動や会話をチェックしてみると……、
赤や黄、そして青色の火花が煌めき、花咲く下で……、ラキアーはチキューのメスとこんな会話をしているではないか。
メス : アキラ、宿しちゃったの。
ラキアー : えっ、そうなの。
大事な身体だから、こんな所にいたらダメだよ、さっ、早く帰ろう。
作品名:33粒のやまぶどう (短編物語集) 作家名:鮎風 遊