33粒のやまぶどう (短編物語集)
「浩二、卒業してからどうしてたんだ。それで……、発見できたのか?」
駅構内にある喫茶店で、学生時代の友人、稲瀬(いなせ)浩二に向かい合い、私はズバリ尋ねました。なぜならあの頃の浩二は未確認生物探検同好会のリーダーをやっていて、よくリュックを担(かつ)ぎ山や無人島へと出掛けていたのを憶えていたからです。
そう言えば、当時はツチノコブームでした。探検から帰ってきた浩二はその存在の可能性を喜々として語っていました。
そんな浩二がやっぱりあの頃と同じように大きなリュックを背負い、改札口からふらっと出てきました。そして私の目の前をヨタヨタと通り過ぎようとしたのですよ。
作品名:33粒のやまぶどう (短編物語集) 作家名:鮎風 遊