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33粒のやまぶどう  (短編物語集)

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 パシッ!

 沙里がまた踊り始めた。アダジオから後半のアレグロへと展開していく3分間のクラシックバレエ。沙里はつま先から指先まで全神経を集め、表情は気位高く、されど風雅に舞った。
 先生の椅子に陣取らさせてもらってる僕は、とにかく沙里に見惚れた。一方鏡の中にいる里沙、この少女も優劣つけがたく威厳があり、美しかった。

 これはきっと──沙里と里沙、この二人の少女がライバルとして認め合い、されど負けじと切磋琢磨してきた結果だろう。このままいけば三日後の発表会、沙里は端麗に舞ってくれること間違いなしだ。

 まことに素晴らしい!
 こんな気持ちの高ぶりが僕の胸に突き上げる。
 それからのことだ、まるでそれとシンクロするかのように、鏡の中にいる僕、いや、ライバルの黒猫野郎から吉兆の雄叫びが上がったのだった。

 ── ニャァ〜オー! ──